2023-07-21

みずほ証券・浜本吉郎の「新・証券戦略」、銀・証一体の強みをどう発揮するか?

浜本吉郎・みずほ証券社長

「成長の牽引役としての役割を果たす」─みずほ証券社長の浜本吉郎氏はこう話す。米国では債券引受でベスト10に入るなど存在感を高める。強みは銀行と証券の連携。例えば法人ビジネスでは銀行が資金を提供し、証券がアドバイスをするという形。また、足元の株価を受けて、日本の個人投資家が株式市場に参入、この受け皿としての役割をどう果たすのかも問われる。浜本氏が目指すものとは。


欧米の現状はどう見えたのか?

「世界経済全体はリスクを抱えながら、高値警戒を強めながらも徐々に推移していくと見ている」と話すのは、みずほ証券社長の浜本吉郎氏。

 浜本氏は今年6月、米国と英国に足を運んだ。現地のオペレーションの視察、投資家との対話、そして後述する買収案件があったからだ。

 米国の現状を浜本氏は「引き続き低い失業率で、高いインフレ率。期待インフレ率よりも、やや警戒的、予防的な高い金利が前提になっている」と話す。

 欧米、特に米国では2022年3月以降、急速な金利引き上げが進んできた。23年6月のFOMC(米連邦市場公開委員会)では一旦停止したものの、FRB(米連邦準備制度理事会)議長のジェローム・パウエル氏は年内にあと2回の利上げを示唆している。米国はインフレに対する警戒感が引き続き強い。

 欧米を見てきた目から、日本市場はどう見えているのか?

「引き続き、金利が低位に抑えられている。そして日本企業の株価はバリュエーション(企業価値評価)的に安いなという感覚はある。また、中国を巡る地政学リスクなどもあり、バリューチェーンが日本と欧米という大きなグループに回帰している」

 日本の株価は上下動を繰り返しながら比較的高い水準を保っているが、それは中国に向かっていた海外投資家の資金が「消去法」的に日本に投じられているからという見方が強い。「英国のヘッジファンドの人と話していたら『30年ぶりに日本で調達して日本株を買っている』と言っていた」と浜本氏。

 今後もこの流れが続くかは、日本銀行の金融政策や、東京証券取引所が上場企業に要請しているPBR(株価純資産倍率)の改善などの施策がプラスに作用するかどうかにかかる。

 また、海外投資家が日本買いを進める一方で、国内投資家の日本売りが続いている。ただ、足元で国内投資家は「含み益が戻って、投資余力が出てきている」(浜本氏)。

 その意味で日経平均の今後については、3万3000円近辺で揉み合って日柄調整をした後、「今年度の後半には3万5000円もあり得る」と見る。

 米国は金利の急激な引き上げで、シリコンバレーバンク(SVB)始め中堅銀行が破綻するなど、一時先行き不透明だと見られたが、引き続き未公開株に投資するプライベート・キャピタルの勢いなど現地の感触を得て「大きなクラッシュの要因はない。ただ、上値を突き抜ける材料も足元ではない」と浜本氏。こうした状況を、証券ビジネスとしてどう捉えるかが問われる。

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