2023-07-21

みずほ証券・浜本吉郎の「新・証券戦略」、銀・証一体の強みをどう発揮するか?

浜本吉郎・みずほ証券社長




FGの中期経営計画を牽引する役割

 2023年5月18日、みずほフィナンシャルグループは新たな中期経営計画を発表した。19年度から「5カ年計画」を進めてきたが、システム障害や足元の経営環境の大きな変化を受けて1年前倒しで策定。

 業績目標は、25年度に連結業務純益で1兆円から1兆1000億円を目指す(23年3月期は8052億円、19年3月期は3933億円)。

 この目標達成に向けて特に、資産形成・運用ビジネスで500億円、国内法人ビジネスで700億円、グローバルCIB(Corporate and Investment Bank、銀行、証券の一体化)ビジネスで600億円を積み上げる見通し。

 浜本氏は、この中計におけるみずほ証券の役割を「成長の牽引役」だとし、「証券ビジネスで、国内でナンバーワンを取りたい」と意気込む。

 事業の成長に向けたドライバーとなるのが、前述のグローバルCIB。このビジネスモデルを特に実践しているのが、米国みずほ証券。そもそも、オフィス自体が銀行、信託、証券という枠組みにとらわれていない。看板には「Mizuho」とあるが、中では各事業の担当者が入り乱れて仕事をしている。

「日本では法律の壁はあるが、この姿の実現は私が目指しているものであり、先輩方から引き継いだ目標でもある」

 その結果、投資適格(IG債)のDCM(債券資本市場)で、過去10年間、米国でトップ10以内につけている。また、非投資適格のDCMでも10位程度、ECM(株式資本市場)でもトップ10入りが視野に入る(いずれもディールロジック調べ)。

 浜本氏は「CIBは、プロダクトそれぞれが強くなるのではなく、全体のバリューチェーンが強くなることが大事」と話す。

 例えば、企業が自社を見直して事業を売る、あるいは成長を目指して他社を買うという時、必要になる機能としてM&A(企業の合併・買収)、ファイナンス、ECM・DCM、シンジケーション(協調融資)、デリバティブ(金融派生商品)、セールス&トレーディングなどがある。

 浜本氏は、その起点として重要なのが、各産業に通じた専門家「インダストリアルカバレッジ」だとする。そうした専門家が企業の経営陣と戦略について話し合える関係を築くことが大事だという。そしてもう一つ重要になるのがアドバイザリー(助言)業務。

 ただ、この2つの業務はみずほにとって「長い間、ミッシングピース(足りない部分)だった」と浜本氏。これまでは基本的には自前で強化しようと取り組んできたが、この数年は提携・買収も視野に検討を進めていた。

 折しもコロナ禍によって業界全体でM&Aが停滞。ブティック的にM&Aアドバイザリーを手掛ける企業は、業績が厳しくなるところが増えた。そのため、彼ら自身も生き残りに向けたパートナーを探していた。

 そんな中、みずほも複数の候補と議論を重ね、23年5月に米投資銀行のグリーンヒルを約760億円で買収することを決めた。経営陣やブランドは存続させるが、米国みずほ証券と一体運営する。

「ミッシングピースが埋まり、フル装備に一歩近づいた。欧州はもちろん、日本のメンバーとのコラボレーション次第で、日本企業をお手伝いする機会が大きく広がる。今までは米系大手の独壇場だったが、より日本企業に近い我々が寄り添いながら仕事させていただける」

 この中計期間中も、米国事業が牽引することになるが、一方で「米国一本足」でも危うい。そこで欧州やアジアにも投資をし、事業を強化していく。

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