2023-07-21

みずほ証券・浜本吉郎の「新・証券戦略」、銀・証一体の強みをどう発揮するか?

浜本吉郎・みずほ証券社長




日本の「金融リテラシー」を高めるために

 多くの人が投資の世界に入ってくるとなるとリテラシー、金融教育の重要性が増す。政府も、金融経済教育を国家戦略として進めるべく、24年中に「金融経済教育推進機構(仮称)」を設立する方針。

 みずほ証券もこれまで、地道な取り組みを進めてきた。全国の支店の支店長や管理職だけでなく、若手の担当者も含め、地元の小・中・高校で授業を行ったり、教材を提供している。

 また、大学では慶應義塾大学、京都大学・大学院、一橋大学・大学院、東京大学大学院、國學院大学で寄付講義・寄付講座を行っている他、早稲田大学と共同で高校生向けのネットでの教育プログラムを提供している。

 楽天証券とも金融教育における連携を進めていく考え。

「お客様のリテラシーが上がり、リスクとリターンのバランスがわかるようになることで、今の資産所得倍増プランが目指しているように、自分の力で自分の将来をつくり、自分の身を自分で守ることにつながる」

 いくら素晴らしい商品を並べても、それを買う人のリテラシーが高くなければいけないということ。

 米国や英国では教育の中に金融投資教育が組み込まれており、中学生くらいまでに学び終えるという。日本は高校生くらいから学び始めるが、どうしても投資についてはプラス面で捉えられてこなかった。

 そのため、これまでは投資教育がないままに定年を迎え、退職金をどう運用したらいいのかわからないというケースが多かった。「これまでは、泳ぎを知らないままで2メートルのプールに投げ込まれるようなものだった。そうではなく、小学生のうちに50センチのプールから始め、溺れる危険性や小さな成功体験を知りながら、リテラシーを高めていくことが大事」

 今はかつてと違い、楽天証券やPayPay証券などのネット証券では1円から投資できる他、ポイントでの投資も可能。若いうちから資産形成に慣れるための装置は整っている。

「楽天証券、PayPay証券などの提携先を含め、グループを上げて取り組む。さらに、これを社員自身が取り組むことでエンゲージメント(愛着心)にもつながる」

 昨年、みずほ証券では延べ63カ店が自主的に金融教育に取り組んできた。浜本氏が指示を出すのではなく、例えばイントラネットなどに各支店の取り組みが掲載されると、それを見た他の支店が呼応して取り組むといった形で「草の根」的に広がっていった。「今年は昨年の倍のペースで取り組みが進んでいる」

 前述の、収益目標を外した上での顧客目線でのアドバイザリーと、この金融経済教育は「両輪」。すぐに数字に表れるものではないが、確実に将来に向けた「種」となる。

 みずほFG全体の収益力向上と、日本全体の金融リテラシーの引き上げは、一見距離があるように見えるが「顧客本位」という意味で強い連関がある。顧客に何かを買ってもらうという発想ではなく、顧客のニーズを満たすことで収益を高めるという循環を築くことができるかが、みずほ証券に問われている。

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