2023-07-21

みずほ証券・浜本吉郎の「新・証券戦略」、銀・証一体の強みをどう発揮するか?

浜本吉郎・みずほ証券社長




ネット証券との連携をどう進めるか?

 23年3月期はコロナ禍の影響が残る中、個人の取引は低調で、証券各社は苦しんだ。だが今期は前述の海外投資家の日本買いなどもあり株価は上昇。岸田政権が打ち出した「資産所得倍増プラン」もあって、かつてないほど個人の投資への関心は高まる。この波をどう捉えるか。

「我々は制度に乗るだけでなく、これまで『貯蓄から投資へ』が進んでこなかったボトルネックに真剣に取り組まなければならない」

 みずほ証券は22年10月、楽天証券ホールディングスの議決権比率19.99%分、約800億円を出資した。いわばパートナーになったわけだが、浜本氏は楽天証券HD社長の楠雄治氏とほぼ毎週のように議論している。

 その場では例えば、「従来型の総合証券のビジネスモデルは今後、持続しないのではないか」といったテーマも話し合われた。

 従来は株式や投資信託などの商品が顧客の「前」に並んでいて、営業担当者は売りたい商品に誘うようなスタイルだった。

 今後はそうではなく、営業担当者は顧客の「横」で、同じ目線で商品を見て、一緒に投資戦略を立てていく。その助言は商品から独立し、顧客にとって最適なものを選ぶ必要があるのだ。

 こうした流れから、みずほ証券では支店での個人向け営業において収益目標、つまりノルマを外した。「今は、どれだけ収益を上げているか、どの商品をどのくらい売っているかといったことを評価の対象としていない。この流れはもう後戻りしない」

 その意味で、今後の対面営業は顧客の数を増やすだけでなく、コンサルティングに特化して、顧客を深掘りしていく。

 そして深掘りした結果として導き出した、例えば事業承継、相続といった課題に対してはグループの銀行、信託と連携して解決していく。

 一方、ネットに親和性の高い世代などはコンサルを必要としないケースも多い。そうしたネット証券による取引を求める顧客は、楽天証券やPayPay証券(PayPay35.0%、ソフトバンク30.6%、みずほ証券34.0%を出資)に送客していく。

「全てのチャネルを自立させて駆動していくことで、1億2000万人は無理でも、多くのお客様にアクセスしていく」

 この国内証券戦略はグローバルCIBと並ぶ、みずほ証券にとっての大きな柱となっている。

 楽天証券、PayPay証券に対しては出資をしているため、両社が強く成長すれば、みずほ証券にとってのリターンも大きくなる。そこに向けては、みずほ証券から両社への商品供給も行っている。例えば、IPO(新規株式公開)銘柄や、個人向けの社債を供給すると「しっかり売れていく」(浜本氏)。

 一方、楽天証券の顧客の中からも、今後資産が増加していく中で、中には対面のアドバイスを求める人も出てくる可能性がある。さらに、そうした顧客はプロ投資家レベルのリサーチを求める動きが出てくるかもしれない。そのニーズをみずほ証券が捉えるということも、今後考えられる。

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