チャレンジはチャンス!
構造改革を進める中で「強い事業」を持つゆえの悩みもある。「尾堂(真一・会長)の時代から『挑戦しよう、新しいことをやっていこう』と言い続け、社員も頭ではそれを理解している。けれども、いざ行動となると、変えない理由が出てきてしまう。これを『こうしたらやれます』『この選択肢を見つけました』という文化に変えていきたい」と川合氏は語る。
組織を変えるため、カンパニー制や分社化の導入、人事評価も変える他、2020年4月に設立した「イノベーション推進本部」のトップにはアジャイル(機敏な)開発の知見を持つ外国人トップを起用。「世の中のマーケット、ニーズに合わせてモノを作る考え方にしていく」。
挑戦には苦難もあるが、楽しさもある。川合氏自身、入社直後は「不具合の連続で10~15年ずっと赤字だった」センサ事業の初期モデルの開発から携わってきた。だが「一生懸命取り組んで問題が解決すると、お客様とも仲間とも信頼関係が生まれる。完全な成功体験でなくても自信も付いていく」。
だからこそ「新しいことへのチャレンジはチャンス」だと実感を込める。
「開発だけでなく、経営も〝アジャイル〟にしていく。世界にもセラミックスメーカーはそう多くない。そこで求められるニーズを満たしていけば、戦えると思っています」
日本のメーカーは高度成長期、より良いモノを作ることで国内外で成長を遂げてきた。だが、変化が激しく、スピードの求められる今、モノづくりの発想そのものを変えることが求められている。日本特殊陶業の挑戦は、日本の産業界全体が挑戦すべき課題ともいえる。