2021-02-05

アサヒGHD・小路明善社長兼CEO「30年後の社会を予測し、社会の変化に対応した事業構成を」

小路明善・アサヒグループホールディングス社長兼CEO



 ─ やはりトップ同士の信頼関係というのは非常に大事だということもありますか。

 小路 大事ですね。実は私には昔から買収に携わってきた経験がありました。具体的には旭化成や協和発酵の焼酎・低アルコール事業の買収です。『ハイリキ』という代表ブランドをはじめ、いわゆる缶酎ハイ事業になりますが、ビール事業のカテゴリー強化を図るという狙いで買収しました。焼酎をつくる設備もありませんでしたからね。

 そういう形で古くから買収に携わってきたわけですが、この経験からすると、やはりグローバルの事業を買収するには、我々としてはまだまだ未熟だったと思うんです。その意味では、成功するディールをいかに見つけるかが重要で、そのディールを持っている人と人間関係をいかに作っていくかです。これが非常に重要であり、それは一応狙い通りにやったかなと。

 ─ CUBのトップとの交流も買収を通じて生まれたと。

 小路 そうです。何回か直接お会いしまして、それからはメールでやり取りしたり、電話会議で情報交換をしています。

 ─ 一方で、小路さんは2050年という中長期の視点に立った経営も展開しています。菅政権がカーボンニュートラルの目標年次を2050年に定めました。アサヒグループとしても50年に世界はどうなっているかを見通すなど、この数字を経営の中でどう捉えていますか。

 小路 我々もサステナビリティーな目標として、30年後の2050年にカーボンニュートラル、つまりCO₂ゼロの実現を謳っています。我々はそういった2050年という30年後の様々な目標が出てくる年を一つのターゲットの年と見ています。実は当社では2050年のメガトレンド分析を取締役会で1年前から議論しているのです。

 ─ 具体的には?

 小路 今までは目の前の事業課題や日々の社会の変化を見て、では、来年、または3年後に何をするかと分析することが多いのです
が、今回のコロナから一つ学んだことがあります。それは、ある日突然リモートワークという10年後の未来が現実になったことです。

 そうなると、来年や3年後を見据えて今何をやるかという「フォアキャスティング経営」に合わせて、未来から逆算する「バックキャスティング経営」も同様に大事になります。

 よく30年先なんてなかなか読めないと言われますが、コンサルティング会社や専門家の知見である程度、先を読むと、必ずしも正確ではないかもしれないですが、変化の兆しというのが結構見えてくるんですね。

 今から30年後がどういう社会になっているのだろうか。人々の価値観がどう変化しているのだろうか。それから世界の政治情勢、外交情勢がどうなっているのだろうかという分析をし、そこからバックキャストして、では我々アサヒグループとしては、社会の変化に対応し、どういった事業構成にしていかなければいけないのかを考える。これは非常に重要だと思います。

 もちろんそれだけではできません。フォアキャスティング経営とバックキャスティング経営とを平行していくことです。今までは、ちょっと先が見えてきたところに焦点を当てるフォアキャスティング経営がほとんどでした。ところが状況は大きく変化しつつあります。

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