2021-01-28

日建設計・大松敦新社長が語る「今後の再開発」

大松敦・日建設計社長

1960年東京都出身。83年東京大学工学部卒業後、日建設計入社。98年企画開発室長、2003年プロジェクトマネジメント室長、11年執行役員、15年常務執行役員、16年取締役などを経て、21年1月1日より現職。

 120年の歴史を持つ日建設計。建築設計部門の社長が多かった中で、初の都市部門出身の社長となった。東京都心は再開発が進んでおり、「地下鉄の発達により、地下の可能性は大いに高まっている」と地下空間に視線を向ける。

 コロナで社会情勢は大きく変わっているが、計画中の再開発は進む。その中でも東京の国際的な地位低下や地震リスク、緑の喪失、雑然とした景観などの課題解決が求められる。そこで「単なる広場や公園ではない『パブリック・スペース』を新たな都市基盤にしたい」と語る。

 都市再開発では道路管理者や鉄道会社、行政、地権者など様々な利害関係者の調整が必須。駅周辺に地下空間が生まれて回遊性が増した東京メトロの日本橋駅もそうだ。「建築と土木が一体にならなければ望むべきパブリック・スペースは実現できない」。合意形成に向けて「中立的な立場」で最適解を導いた。

 今後も「駅」を基軸とした都市開発の〝プラットフォーム〟となって課題解決に乗り出す。渋谷駅の「東口地下広場」で渋谷川の線形を一部改良し、川の下に公共的な地下空間の広場を設置したこと等が代表例だろう。

 東京駅が変わる─。八重洲口に面する3地区で大型の再開発が控えているが、「再開発を通じて地下空間が繋がれば、東京駅から京橋駅まで雨に濡れず、スムーズに移動できるようになる」と地下の可能性を語る。

 「東京ミッドタウン」や「渋谷駅周辺開発」などを担当し、パブリック・スペースを含めたまちづくりを実現。入社後最初に担当した都市開発「さいたま新都心」では、官庁街中心の従来型計画に対し、複合的な交流施設を配置して、にぎわいのある開かれた街を創出した。海外ではロシアやインド、中国で都市構造を公共交通型に変える提案をする。

 学生時代に師事していた槇文彦氏が設計した「代官山ヒルサイドテラス」を歩き、「中庭と建物が調和した光景が気持ち良かった」と都市開発に憧れを抱いた。その魂はコロナ禍の再開発でも発揮されそうだ。

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