2022-12-21

【政界】立て直しに向けて内閣再改造論が浮上 政治リーダーとしての真価問われる岸田首相

傷んだリンゴの木の下は腐ったニオイと落下物 illustration by 山田 紳

 政府の総合経済対策を反映した一般会計歳出総額28・9兆円の22年度第2次補正予算案は12月初旬に成立する運びだ。電気・都市ガス料金の負担軽減策やガソリンの店頭価格を抑える燃油補助金によって、標準世帯の家計負担は来年1~9月で計4万5000円程度軽減される。

 一方、必要な歳入の8割は国債を追加発行して賄う。財務相の鈴木俊一は「経済再生と財政健全化の両立を図ることは重要だ。歳出、歳入両面の改革の取り組みを続ける」と述べているが、来年春の統一地方選を前に与党の歳出圧力は強く、財政悪化に歯止めがかかる気配はない。岸田は目指す経済政策を明確に示すべきだろう。

 東南アジア歴訪に合わせて岸田は韓国大統領の尹錫悦、中国国家主席の習近平と相次いで会談した。対面による正式な首脳会談はいずれも約3年ぶり。日本側同行筋によると、日中首脳は「落ち着いてじっくり話をした」とされる。しかし、岸田が沖縄県の尖閣諸島を含む東シナ海情勢に「深刻な懸念」を表明し、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調したのに対し、習は「いかなる口実であれ中国の内政への干渉は受け入れない」とクギを刺した。日韓首脳会談でも、最大の懸案の元徴用工問題に具体的な進展はなかった。

 外遊中には、北朝鮮が11月18日、大陸間弾道ミサイル(ICBM)級のミサイルを発射した。意図的に高く打ち上げるロフテッド軌道だったが、もし通常軌道で発射したら「米国全土が射程に含まれる」(防衛相の浜田靖一)と考えられ、自民党では「反撃能力」(敵基地攻撃能力)保有に向けた議論加速を求める声が高まっている。

 一方、政府の「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」(座長・佐々江賢一郎元駐米大使)は11月22日、岸田に報告書を提出した。防衛力の抜本的強化には「安定した財源の確保が基本」として、歳出改革による財源捻出と幅広い税目による国民負担を求めた半面、自民党の一部に根強い国債発行論を否定した。防衛費増額の財源確保も岸田政権の喫緊のテーマだ。

 報道各社の世論調査で自民党の支持率は比較的高い水準を保っており、「岸田では統一選を戦えない」という状況にはない。しかし、選挙結果によっては、23年5月に広島で開催される主要7カ国首脳会議(G7サミット)を「花道」にした退陣論が浮上する可能性がある。岸田は自身がリーダーシップを発揮しやすい体制を早期に固めることができるかどうか。政権の行方はその一点にかかっている。(敬称略)

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