2022-12-21

【政界】立て直しに向けて内閣再改造論が浮上 政治リーダーとしての真価問われる岸田首相

傷んだリンゴの木の下は腐ったニオイと落下物 illustration by 山田 紳

 岸田は8月に内閣を改造したばかりだ。旧統一教会と自民党議員との関係をメディアが連日のように報じる中、人事でリセットを図ったのだが、再任した山際前経済再生担当相や自民党政調会長に起用した萩生田に新たな問題が発覚したのは周知の通りだ。

 時の首相の求心力を高めるには人事は有効な手段だ。ただ、岸田派は党内第4派閥。主要各派への目配りが欠かせず、岸田の独断専行とはいかない。それでも、岸田に近いベテラン議員は「ここまできたらやりたい人事をやるべきだ」と語る。

 この議員によると、焦点は閣僚ではなく幹事長人事だという。幹事長の茂木敏充は副総裁の麻生太郎とともに政権を支え、岸田にとっては心強い存在のはずだった。ところが、最近の茂木は「ポスト岸田」を意識するあまり、岸田との関係がしっくりいっていないとささやかれている。

 象徴的だったのが10月下旬のBSテレ東の番組。茂木は岸田、麻生との関係をオクタヴィアヌス、アントニウス、レピドゥスによる古代ローマの政治体制になぞらえ「三頭政治と言う人もいるようだ」と語ったのだ。幹事長として総裁を支えるというよりは対等のニュアンスがあり、自民党内はざわついた。

 旧統一教会の被害者救済に向けた新法案を巡っても、茂木は主導権確保に動いた。当初は自民、公明、立憲民主、日本維新の会の4党実務者で議員立法を前提に協議が進んでいたのだが、宗教法人への過度な規制を警戒する公明党に配慮して岸田が閣法での国会提出を表明すると、茂木は11月18日、与野党の幹事長級会合を新たに招集。その場で政府案の要綱を示し、議論の土俵を自陣に移し替えた。

 救済法案を所管する消費者庁の担当者は「幹事長が出てくるとは……。内閣支持率が低迷し、いよいよ自分の出番だと思ったのか」と驚き、首相官邸幹部は「経緯を承知していない」と不快感をにじませた。

 自民党国対委員長の高木毅の機能不全も岸田政権の懸案になっている。立憲民主党国対委員長の安住は高木を交渉相手とみなしておらず、官房長官の松野に直接連絡することが常態化している。口さがない官僚は「松野国対委員長」とささやき合う。

 今の岸田政権は要の人物がてんでんばらばらのように映る。首相官邸と自民党が両輪で岸田を支える体制を整えなければ、政策の推進力は生まれない。とはいえ、自民党役員を含む大がかりな人事は、党内基盤が弱い岸田にとってリスクと背中合わせでもある。

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