2022-12-21

【政界】立て直しに向けて内閣再改造論が浮上 政治リーダーとしての真価問われる岸田首相

傷んだリンゴの木の下は腐ったニオイと落下物 illustration by 山田 紳

 寺田を更迭しても、終盤国会で岸田政権が政策課題に集中して取り組む環境が整ったわけではない。復興相の秋葉賢也にも「政治とカネ」の問題があり、野党が追及を続けている。火種は残ったままだ。

「岸田は決断が遅い。安倍内閣なら官房長官の菅(義偉)が即座に切っただろう。そういう役回りが今の首相官邸にはいない」

 自民党の閣僚経験者は官邸の体制に疑問を呈する。昨年10月の政権発足時、元首相の安倍晋三は側近の萩生田光一を官房長官に推したが、岸田は聞き入れず、同じ安倍派の松野博一を抜てきした。同派へのけん制色が濃い人事で、岸田と松野に以前からの強い結び付きがあったわけではない。

 岸田が葉梨を更迭した11月11日、松野の携帯電話に「悪霊退散」というシールが貼られていて、番記者の間で話題になった。ユーモアのつもりかもしれないが、松野にはどこか第三者的な雰囲気が漂う。

 官房副長官の木原誠二も「キャパオーバー気味」(政府関係者)だ。岸田の懐刀として当初は「あらゆる政策案件は木原を通さないと岸田に届かない」(同)と言われるほどの働きぶりだったが、いかんせんまだ当選5回。百戦錬磨の与党議員と渡り合うには経験が不足している。「最近は岸田に忠告を聞き入れてもらえず、悩んでいるようだ」(自民党幹部)という声も聞こえてくる。

 危機管理能力の点で、岸田内閣は安倍内閣に遠く及ばない。約7年8カ月続いた第2次安倍政権では計10人の閣僚が辞任したが、それでも政権が倒れることはなかった。

 例えば17年7月、陸上自衛隊による南スーダンPKOの日報隠蔽問題や、東京都議選の応援での「自衛隊としてもお願いしたい」という発言で稲田朋美が防衛相を辞任した際には、安倍は9月に衆院解散に打って出て自民党を勝利に導き、危機を脱した。

 世論の賛否が割れたまま実施した安倍の国葬や旧統一教会の問題で岸田内閣の支持率が急落すると、永田町では年内の解散・総選挙の観測がにわかに広がった。首相周辺が与党の引き締めを狙って流したのだろうが、昨年の衆院選からわずか1年あまりでは、実際には無理筋だった。最大派閥の細田派(当時)が支えた安倍政権のようにはいかない。

 自民党内では「岸田は葉梨と寺田を同時に辞めさせるべきだった」と不満が募っている。「かばいきれなくなったあげく更迭」の繰り返しでは、野党を勢いづかせるだけだからだ。寺田の辞任後、立憲民主党国対委員長の安住淳は「首相の決断は遅きに失した。寺田大臣が居続けるおかげで国政が停滞した」と批判した。辞任ドミノは終盤国会の審議日程にも影響している。

 では、岸田は八方塞がりなのか。起死回生策として取りざたされるのが、今国会閉会後の内閣再改造だ。

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