―― それは海外で売っていた商品ですか。
神山 そうです。ある自社生産の電子装置を輸出していて、売上の半分くらいが海外だったんです。しかし、採算が合わないことにはどうしようもない。
撤退というのは、せっかく手塩にかけて育ててきた我が子を手放すようなものですから、それは葛藤がありました。技術者の中には「とにかく頑張ります」と言って、継続を訴えてきた人たちもいました。
しかし、社内の問題ならともかく、いくら社員が大反対しても、為替などの外部要因が変わるではわけありません。ですから、社員たちには申し訳ないけれども、わたしは思い切って撤退を決めたんです。
―― これはトップのつらいところでもありますね。
神山 そこがトップは孤独だと言われる所以ですよね。
人生もそうですし、企業経営もそうですけど、何事もいい時一辺倒でいくことなんてあり得ません。景気もそうですし、業績もそうですし、当社も必ずいい時と悪い時を繰り返しています。やはり、経営者が心すべきことは、世の中の流れをよく観察し、将来の発展に向けて種をまき続けることだと思います。