2022-10-08

三井化学・淡輪敏会長に直撃!「当社の強みは技術。それを生かした機能製品にシフトして、収益の安定性を高めていく」

淡輪敏・三井化学会長




2050年の脱炭素に向けて

 ─ 会長の立場で、グループ内にはどういう言葉で意識の変革を促していますか。

 淡輪 地政学リスクはウクライナ危機で急に飛び出してきたわけではなく、米中貿易摩擦問題から起きたものです。特に、米中摩擦の最初は、例えば日本でつくった製品でも、米国に輸出する場合には原料の原産地証明が必要になるなど、サプライチェーンが非常に制約を受けました。

 我々は当時から少しずつ、そうした意識で動いてきましたから、今回の事態で、さらに分断が進むという前提で何を考えてくか。そうした意識が必要だということです。

 ─ 何が起きるかわからないという覚悟が求められると。

 淡輪 ええ。経済安全保障の問題、東西分断が今後さらに進むとなれば、それも含めて考えておく必要があります。

 ─ 三井化学も相当グローバルに事業が広がってきていると思いますが、現状は?

 淡輪 13年にドイツのHeraeus Holdingsから、同社の歯科材料事業(現在のKulzer社)を買収したことで一挙に拡大し、現在世界50数カ国にネットワークを持っています。三井化学グループ全体で海外売上高比率は22年3月末時点で47・8%です。

 ─ 2050年の脱炭素は産業界、世界全体の共通目標ですが、今後の道筋を聞かせて下さい。

 淡輪 起点が13年ですが、GHG排出量が615万トンでした。これを19年に様々な積み重ねで506万トンまで減らしてきました。2030年には40%減の375万トン、2050年には80%以上削減していきたいと考えています。

 自社でできる部分はしっかりやっていくということですが、ある線を超えると個社では対応し切れないことが必ず出てきます。ですから、そこでは例えば地域連携など、共通での取り組みが必要になると思います。

 ─ そうした取り組みの事例は出ていますか。

 淡輪 共通で取り組んでいると同時に、政府の支援もいただいている事業はアンモニアの燃料化です。技術的にクリアすべき課題は結構ありますが、我々は水素以上に実現性が高いと見ています。

 それは、水素がマイナス240度に冷凍したものを扱うのに対し、アンモニアはマイナス50数度と、ハンドリングに温度差があることが大きい。今後、燃焼効率や、エチレンクラッカーでどこまで使えるかといった実証を進めていきます。

 他にもバイオマスナフサがあります。21年12月から、大阪工場のナフサクラッカーに、日本で初めてバイオマスナフサの投入を開始しました。フェノールなどの化学品や、ポリプロピレンなどのプラスチックのバイオマス化を進めています。

Pick up注目の記事

Related関連記事

Ranking人気記事