2022-09-02

【エネルギー問題を考える】経団連・十倉雅和会長「原子力は安全を確保し、住民の理解を得て、再稼働を進めるべき」

十倉雅和・経団連会長



火力、再エネ、原子力どれも大事


 ─ そういう中での中国との関係ですね。今年は日中国交正常化から50年の節目の年になるんですが、経団連としては、中国にどのように向き合っていく考えですか。

 十倉 不確実な国際情勢下にありますが、経済の交流はきちんと継続していきたいと思っています。

 経団連では、毎年一度、日中の産業界同士の交流強化や協力促進を目的に「日中CEO等サミット(日中企業家及び元政府高官対話)」を開催しております。昨年はリアルでは開催できませんでしたがオンラインで実施しました。

 ただ、日中経済協会合同訪中代表団のような訪中する会合は、コロナ禍にあり、中国のゼロコロナ政策もあって、ここしばらくは開催できていません。

 ただ、9月には、日中国交正常化50周年を記念したシンポジウムやセレモニーを開催する予定です。

 ─ 経済人のつながりは大事ですね。

 十倉 とても大事です。また、こうした国交正常化50周年のイベントは、日中政府のご協力も得ながら実施される予定です。

 ─ 十倉さん自身、住友化学の経営においても、中国との関係は大事だと思うんですが、今後はどういうスタンスで臨みますか。

 十倉 先ほども申し上げたように、機微な技術については、民間企業は、経済安保のルールに沿って行動し、それ以外のところは、経済原則に沿って自由に取り引きすべきと思います。

 そうしないとブロック経済、ひいては国内で自給する経済になってしまいます。国内で自給率を高めなければならないものには、エネルギーなどがありますが、何から何まですべて国内で自給するべきではありません。

 ─ 問題はそのエネルギーですね。天然ガスや原油の価格が軒並み高騰し、電力不足が叫ばれるなど、日本のエネルギー不足は深刻です。東日本大震災以降、原子力の議論があまりなかったんですが、ここへ来て必要だという機運も出てきています。既存の火力や再生可能エネルギーも含めて、原子力とのバランスはどう考えていくべきですか。

 十倉 経団連としては、従来から原子力発電の重要性を主張し続けています。今年4月には、『グリーントランスフォーメーション(GX)に向けて』という提言書を発表しました。この中で、原子力にかなりのページ数を割いています。

 もちろん、火力も再エネも原子力もどれも重要です。ただ、エネルギー政策というのは、足もとの問題だけでなく、中長期的なことや、エネルギー・トランジション(実効ある炭素中立への移行)を考えていかなくてはなりません。

 そういう意味で、「S+3E」、つまり、安全性(Safety)と、エネルギー安全保障・安定供給(Energy Security)、経済効率性(Economic Efficiency)、環境適合性(Environment)が、エネルギー政策を考える要諦となります。

 原子力は、準国産エネルギーによるゼロエミッション電源であり、経済合理性に優れています。安全性の確保を大前提に、利活用していくことが求められます。

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