2022-07-09

【政界】最大派閥の安倍派を意識しながら地固め図る岸田首相の覚悟

イラスト・山田紳



「決めるのは総裁」

 衆院小選挙区の新たな区割りは、参院選後の臨時国会での公選法改正を経て、次の衆院選から適用される見通しだ。しかし、区割りが変わる現職には「うちは半分近くが初見の有権者になりそう」(閣僚経験者)などと戸惑いが広がっている。有権者への新区割りの周知と候補者調整に一定の時間がかかるため、岸田の解散戦略にも影響する。

 今の衆院議員の任期満了は25年10月。参院選が終わると3年間は大型の国政選挙の予定がなく、自民党が勝てば岸田は「黄金の3年」を手にすると言われている。しかし、実際には24年9月の党総裁選というハードルが待ち構える。

 解散がなければ25年夏の参院選は衆院選とのダブルの可能性が高まり、総裁選は「選挙の顔」を選ぶ重要な意味を帯びる。もしその時点で政権が失速していたら、岸田の再選には黄信号がともる。昨年の総裁選直前に再選を断念した前首相・菅義偉と同じ状況だ。岸田は総裁選より前に解散のタイミングを探るだろう。

 それには、参院選後の自民党役員・内閣改造人事がまず重要になる。岸田が引き続き融和を重視するか、それとも独自色を出すか、党内の関心は高い。結果として人事への不満が噴き出すようだと、区割り改定問題に飛び火し、岸田の求心力は一気に揺らぎかねない。

 公示前日の6月21日、日本記者クラブ主催の党首討論会で「安倍元首相からいろいろ注文がある。どう対応するか」と問われた岸田は、淡々と答えた。「自民党は懐の深い政党だ。先輩方をはじめ多くの意見を聞きながら、最後は決めていかなければいけない。それが総裁の立場だ」

 自民党が参院選で掲げたキャッチコピーは「決断と実行」。偶然とはいえ72年衆院選と重なった。当時の総裁は「今太閤」と呼ばれた田中角栄。岸田が名宰相の道を歩むかどうかは、その覚悟と実行力にかかっている。(敬称略)

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