2022-06-22

拓殖大学国際学部教授・佐藤丙午「専守防衛はいかに残酷な政策であるかが分かった」



 ―― 計算違い?

 佐藤 はい。おそらくロシアは、三つか四つの目標を同時に追求しようとしていました。

 一つはやはり、クリミア半島から東部のドンバス地方の間の陸の回廊を確保すること。可能であれば、ウクライナ南部のヘルソンからオデッサに至る黒海沿岸地域を侵略して、その後、モルドバまで攻撃して黒海沿岸の制海権というか、管理権を全てロシアが握る。これを一番大きな目標にしていたと思います。

 もう一つは、ウクライナがNATOに加盟することを断固として阻止すること。

 そして、三つ目は打倒・ゼレンスキー政権。ただ、これはプライオリティとしては、そんなに高くなかったのではないかと思います。むしろ、簡単に実現できる目標と、楽観視していたように見えます。

 この他にも、ドンバス地方の支配地域を拡大して、ロシアの影響力を強めるなど、いろいろな目標が当初はあったと思います。ただ、政治的に考えたら、プーチン大統領は明らかに順序を間違えました。

 最初に首都キーウを狙うのではなく、クリミアからドンバスに至る南東部の陸の回廊の確保に集中してれば、ロシアとしては、もっと大きな成果を挙げられたのではないでしょうか。

 ―― そういう意味での計算違いだったと。

 佐藤 ロシアは東部地方だけを攻めるのではなく、最初からキーウを攻めて、ゼレンスキー大統領の退陣を狙うなど、二兎も三兎を追ってしまったために、一兎も得ずになりかねない状況です。

 どうしても、大統領を殺害するとか、首都を奪うという話になると、そこに焦点が当たってしまいますので、国際社会の注目や支援はどうしてもウクライナに集まりますよね。そういうことで、ロシアにとっては思うような成果を挙げることができなかったのだろうと思います。

続きは本誌で

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