2021-12-13

【埼玉県民のソウルフード】トラック運転手の胃袋を掴む「山田うどん」の地域に根差す経営

トラックが数台駐車できる「山田うどん」



店舗閉鎖を巡って父とぶつかる

 ただ、同社の道の地は順風満帆だったわけではない。山田氏が商社から山田食品産業に入社し、社長に就任したのが2006年。2年後にはリーマン・ショックの襲来を受けた。「継続していた成長が落ち込み、店舗の撤退を父に進言すると、かなりぶつかり合った」。

 山田氏の危機感を感じた先代も理解を示し、直営店約190店舗のうち30店舗を閉店した。脱埼玉を見据えて東京・浅草などの都心に出店したこともあったが、うまくいかなかった。

「うちに気取ったことは合わない。常連のお客様が普段の生活の中で自然とお店に足を運ぶことが『山田うどん』らしさ。庶民に愛され、その胃袋を満たすことが当社の役割だ」(同)

 山田氏は会社の立て直しに奔走する一方、山田うどんの「らしさ」を失わせることはなかった。例えば、うどん。同社のうどんの特徴は「コシがない」こと。続けて「特徴がないのが特徴だ」と強調する。うどんは工場で一度茹で上げた麺を袋詰めして各店舗に配送。茹でたうどんを使用することで料理の提供スピードは早くなる。もちろん、その中でも、うどんの味なども緻密に改善し続けている。

 さらに同社のもう1つの特徴が女性店長の割合が7割を占める点だ。「昭和の時代から子育てを終えた女性スタッフが店舗運営の中心。家に帰ってきたような店舗運営を心掛けている」

 もちろん、新たな取り組みも実施。女性をターゲットにした新業態「埼玉タンメン 山田太郎」やコロナ禍の「おうち時間」を楽しんでもらおうとEC用に開発した「手打ちうどんキット」など、どちらも好調だ。

 山田氏によると、危機時に定格が強みになるという側面もある。「うまい」「安い」「早い」、そして「腹いっぱい」――。今後も庶民に愛される日常の「食」を提供し続けていく考えだ。

【ファストフードに進出】鳥貴族HD・大倉忠司がコロナ禍で見つけた新事業創出のキーワード

Pick up注目の記事

Related関連記事

Ranking人気記事