2021-12-06

【世界シェア首位】THK社長が語る「当社の製品は『縁の下の力持ち』。培った技術を生かして 『モノづくりサービス業』に」

寺町彰博・THK社長

「当社の製品は表には出ませんが、『縁の下の力持ち』として働く重要な部品です」と話す、THK社長の寺町彰博氏。世界シェア5割の「LMガイド」は機械の高精度化、高速化、長寿命化を実現する重要部品。そのTHKが2021年、創業50周年を迎えた。近年、寺町氏が強調しているのが「モノづくりサービス業」への転換。顧客の課題を解決するために、どのような企業の姿を目指しているのか。

コロナ危機で変わった働き方


 ─ コロナ危機から2年近くが経ちますが、寺町さんはこの危機について、どのような認識を持っていますか。

 寺町 時代の変化のスピードを加速させたのではないでしょうか。例えばウェブを活用したリモートでの仕事は大きく進捗しましたし、中国のように電子マネーを国が管理するといった手法、さらには自動車のEV(電気自動車)化など、従来なら5年かけて進むような変革が一気に進んでいます。

 ─ THKはモノづくりの会社ですが、リモートワークの割合はどのくらいですか?

 寺町 当社は本社・営業部門では90%(10月1日現在)がリモートになっています。その中で技術関係の設計者なども、自宅でCAD( Computer aided design=コンピュータ支援設計)を使って仕事を行っています。

 ただ、製品の信頼性を高める耐久試験、分析、試作などのため、どうしてもハードを使わなくてはならない社員については90%にこだわっていません。このように出社しなければならない場合でも、できるだけ通勤時の感染リスクを減らすために、時差出勤、近隣ホテルへの宿泊、自転車・自動車通勤など、状況に応じて様々な工夫をしています。

 ─ コロナ終息後の働き方をどう見通していますか。

 寺町 リアル、リモートワークはどちらも良さがありますから、組み合わせになるのではないでしょうか。

 当社ではPCとインターネット環境さえあれば、自宅でもどこでも仕事ができます。インターネット電話を使っているため、どこにいても外線電話を受けたり、それを社内へ転送することが可能ですし、会議もいろいろな場所から参加できます。

 従来、我々がお客様と技術的な打ち合わせをする時には、訪問するか、来ていただくかでした。ところがリモートであれば、移動の時間がありませんから、お互いに空いている時間が決まりさえすれば、すぐに打ち合わせができます。

 また、営業の人間も遠隔から参加できますし、技術の人間も、例えば自分の専門外の話題が出てきたら、専門の人間にスイッチすることも可能です。

 ─ 多様な働き方を進めていくということですね。

 寺町 ええ。私は「ウィズコロナ」という言葉が好きではありません。共存ということはあり得ないからです。今、先進国はワクチン接種を進めて感染をある程度抑えることで経済活動ができるようになってはいるものの、決して共存しているわけではありません。

 ですから私は「アフターコロナ」と言っています。

 ─ コロナが業績に与えた影響は?

 寺町 当社の製品は医療機器にも多く使われていることもあり、社会的に不可欠な「エッセンシャルビジネス」として各極で仕事ができていました。昨年の夏場くらいまでの立ち上がりは順調でしたが、その後、やはり各国でお客様の工場が停止し、当社が操業を再開しても、お客様が稼働できない状態が続いて、大変な時期もありました。しかし、その後急速に回復して、今は大変忙しくさせていただいており、2021年12月期は大幅な増収増益の見込みとなっています。

「THK」という社名に込めた思い


 ─ 改めまして、THKは今年創業50周年を迎えましたね。お父さんの博さんが創業して、寺町さんは学生時代から会社を手伝っていましたね。一言では表せないとは思いますが、どう総括しますか。

 寺町 あっという間の50年だったと思います。当社が1989年に株式を公開してから32年が経っていますが、その年数が、それ以前の倍くらいになっています。

 ─ 創業の1971年は米国が金とドルの交換を停止した「ニクソン・ショック」が起きた年で、非常に世の中が荒れた時期でしたね。

 寺町 そうですね。創業時は私はまだ学生の立場でアルバイトに行くくらいでしたが、当時は本当に小さな会社で、社員の人達も家族みたいな感じでしたから、楽しかったですね。

 ─ 学生時代から会社を手伝ったことは、後々役に立ちましたか。

 寺町 ええ。父がTHKを立ち上げる時、私の兄弟はまだ小さく、相談相手は私しかいませんでしたので、例えば、THKというブランド名もいろいろと話をしながら決めたんです。

 我々の役割とは何かを考えて名付けました。当社の製品は表には出ませんが「縁の下の力持ち」として仕事をする重要な部品ですから「タフ」でなければいけません。なおかつ当時は日本が「安かろう悪かろう」から「よかろう安かろう」に転換していく時期でしたから、世界で最高品質、「ハイクオリティ」のものを提供していこうと考えました。

 さらにものまねではなく、自分達が開発したものをお客様に提案していくと同時に、今だとソリューションという言葉になるのかもしれませんが、技術でお客様の「ノウハウ」づくりのお手伝いをしなければなりません。そしてこれらの「Toughness」、「HighQuality」、「Know-how」という、我々に必要な3つの要素の頭文字を取って「THK」というブランド名にしたのです。

 ─ 創業時は東邦精工という社名でしたね。

 寺町 ええ。それを世界で通用する会社にしようと84年に、社名とブランド名を一致させるためにTHKに商号を変更したわけです。

 ─ その意味で創業時の思いが、今のTHKの成長を支えているということですね。

 寺町 そう思います。今でも当社の社員には入社時に、この「THK」の3つの要素を徹底的に教え込んでいます。

Pick up注目の記事

Related関連記事

Ranking人気記事