環境関連に強い投資銀行を買収
野村がサステナブルへの取り組みを強めた象徴的な出来事がある。それが19年12月に発表した、ブティック型投資銀行の米グリーンテック・キャピタル・アドバイザーズの買収。
グリーンテック社は09年に、UBSで投資銀行責任者を務めていたジェフ・マクダーモット氏が創業。短期間で自動車などのサステナブル関連技術、再生可能エネルギーなどインフラへの投資でリーディングファームと呼ばれる存在になった。
グリーンテック社は野村グループ入り後に「ノムラ・グリーンテック」に社名変更。さらに野村は、21年にマクダーモット氏をグローバル投資銀行事業の共同責任者に任命した。この人事は世界の流れの中で、野村がサステナブル関連事業を成長分野と捉えている表れと言える。
今年4月にはサステナビリティ推進担当役員を新設し、コンテンツ・カンパニー長を務める執行役員の鳥海智絵氏(野村証券専務)が就いた。
「ブラウンからグリーンへと直接のお金の流れをつくること、それに多くの人を巻き込む仕組みをつくること、広くマーケットや規制のデザインに関与することで、当社なりの貢献ができる」と鳥海氏。
今後、野村は債券の発行を始めとする資金調達支援、インフラストラクチャーファイナンスの実行、サステナブル関連M&A(企業の合併・買収)の助言などに注力し、脱炭素の動きに絡んでいく。
ニッセイ基礎研究所チーフエコノミストの矢嶋康次氏は「今、サステナブル関連はバブル的様相を呈している。そのためサステナブル関連に投資した時にリターンがあったのか、なかったのかを企業、金融機関がチェックし合う仕組みが必要。また、世界ではサステナブルを巡るルール形成が進んでいる。政府はそこに入り込み、きちんと日本に資金が回ってくるための活動をする必要がある」と指摘する。
2050年のカーボンニュートラル実現には、今後30年間に世界で約122兆ドルの投融資が必要だという試算もあり、今後サステナブル関連の資金の動きはさらに活発化することが予想される。
20年、野村HDはサステナブル・ボンド・リーグテーブルで、日系金融機関では首位だったものの、世界では12位というのが現実。これをいかに高めるかが問われる。
企業が脱炭素を進めるには、その投資において資金調達が欠かせない。銀行の役割も大きいが、債券発行や関連事業への投資やM&Aなどで野村の果たすべき役割は重い。