2021-10-26

【トヨタ】「ウーブン・シティ」が示唆する次世代事業

造成工事中の建設予定地。早ければ2024年にも住人が入居し、一部が開業する予定。最終的には約2000人が住む



IT企業の自動車業界参入

 いま、自動車業界は激変期を迎えている。CASEの到来で「グーグルやアップルが製造受託メーカーと組んで自動車業界に乗り出す日は近い」(関係者)。そしてIT企業が参入すれば自動車メーカーは下請けとなりかねない。トヨタが75年かけて築き上げてきた産業構造が破壊されるほどのインパクトだ。

 貝瀬氏は「GAFAの強みは生活者の豊かさを愚直に追求する姿勢だ。その企業姿勢に魅了された優秀なエンジニアたちが集まってきている」と指摘する。トヨタはそういった企業と渡り合い、競争に打ち勝つためには、ソフトウエアの力も磨く必要がある。昨今、トヨタが「ソフトウエア・ファースト」を標榜するのはそのためだ。

 豊田氏も「車の一部改良がソフトのアップデートという概念に変われば、トヨタのハードの強みが出てくる」と話す。スマホのアップデートの概念だ。そこでソフトウエアの開発力が上がれば、トヨタがこれまで積み上げてきた耐久性、交換部品の入手や修理のしやすさといった、ものづくりの強みが生きる。

 ただ課題もある。1つは地元住民との対話だ。グーグルがカナダのトロントで進めていたまちづくりは挫折に追い込まれた。
「収集した地域のデータがどのように保護されるのかという議論が当初からあり、市民と行政との間でいさかいが絶えなかった」(別の関係者)ことが一因だ。

 また、ライバルもいる。中国・深圳や雄安新区でも大規模な都市づくりが進み、「世界中の自動車メーカーが自社のクルマを走
らせ走行データを収集している。ウーブン・シティの規模を遥かに凌駕している」との声もある。

 トヨタの創業家には“一代一事業”という習わしがある。織機も自動車も住宅も生活者の豊かさを追求して始めた新規事業だった。そして章男氏の時代となり、まちづくりを通じて生活者の豊かさを見つける作業を行っている。地元・裾野市とも連携し、世界中の最先端の知恵を持った人材を呼び込めるか。その成否がトヨタのクルマづくりにも影響を与えることになる。

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