2021-10-06

【ガバナンスを考える】企業と株主、そして社外役員と従業員のあるべき関係とは? 答える人 牛島信・牛島総合法律事務所代表弁護士(パート2)


日本的なガバナンスを議論しないままでは…



 ―― ただ、一部では、社外の取締役に社内のことが分かるのか? という見方があることも事実です。

 牛島 問題はそこです。社外の方に力を持たせても、それだけではうまくいきません。特に人事権は最大の権力です。日本の会社では、社外の人だけでは、社内の人から見て納得できる人事をすることは難しいのです。

 社内事情を知らないまま納得がいく人事を行うことができるのは、よっぽど目に見えて悪い社長をたたき出す時ぐらいです。社長が難しい判断を下すにあたっては社外の方の助言は必要です。しかし、事情が分からないまま右向け、左向けなどとするのではうまくいくはずがありません。

 わたしはそもそも独立社外取締役を直ちに理想的なものと見る考え方には違和感を覚えます。欧米的な発想も行き過ぎてはいけません。欧米的なコーポレート・ガバナンスを「つまみ食い」のようにそのまま日本に持ってきてもうまくいくはずがないと思います。日本には日本の歴史と現実があるからです。

 そういう日本の現実の良い点を議論しないまま、東芝や三菱電機の問題を議論するのは、表面を追いかけすぎているという気がします。

 ―― いずれにせよ、日本の伝統的な企業に外国人社長が就くというのは、グローバル時代の象徴ですよね。

 牛島 これはいい質問だと思います。これだけ海外に進出している企業が、日本の会社だからといって、「今後も日本人だけでやっていけるのか?」と。ただ、やっていけるかどうかは、先ず外部の人というのではなく、できるかぎり、その会社の内部の人たちに試させたらどうかとしか言えません。

 でも、社長が社内のことを一番よく分かっているから、危機時だと判断すれば、社外取締役と相談し、社外から外国人を連れてくることも躊躇しない。それも当然あり得ることです。

 結論として申し上げれば、近い将来を見通す限り、日本企業は社外が力を持ちさえすれば良くなるというような単純な話ではない。端的に言うと、当面は社内取締役が過半数で、有力な社外取締役が3分の1以上いるという形がいいのだろうと。

従って、社長は本来、社内から選ぶことが多いけれども、場合によっては社外から連れてくることもある。そういう体制が一応バランス感覚に則っているのかなと思いますね

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