2021-08-27

帝国ホテル社長が語る”コロナ禍での一大投資”



開業150周年を見据えて

 ─ まさに創業の原点に立ち還るということですね。さて、コロナ禍でありながらも帝国ホテル東京の建て替えを決断しました。骨子を聞かせてください。

 定保 現在の本館は完成から50年、タワー館も約40年経ちます。その間、パレスホテルもホテルオークラも建て替えが終わって新しくなりました。また、今後も東京に進出する外資系の高級ホテルは新しい施設、新しい流行を持ったサービスを提供してくるでしょう。こうした中で、施設的に我々が見劣りしてしまっている点は否めません。

 2007年から三井不動産に資本参加いただきましたが、その後、内幸町街区全体において再開発を視野に入れた勉強会を進める中で、当社としても帝国ホテルの建て替えをどう進めていくかを検討してきました。

 その結果、コロナ禍で足元の経営状況が大変厳しいこともあり悩みましたが、開業150周年を迎える2040年が内幸町街区全体の再開発が終わる37年頃とも重なるということもあって建て替えを決断しました。現時点の想定では、まずは30年度にタワー館の建て替えを終え、その後、本館の建て替えに進み、36年度の竣工をもって全体が完成する予定です。


2036年度の竣工を目指して建て替えが決まった「帝国ホテル東京」(提供:帝国ホテル)

 ─ 開業150周年を見据えた建て替えになるわけですね。

 定保 ええ。開業150周年を最も良い形で迎えたいということです。当ホテルのロケーションは世界最高だと思います。そしてサービスでも渋沢翁の思いを引き継ぐ従業員が数多くいます。ヒト、サービス、料理は他には負けないと思っていますので、残るは施設になります。

 そもそも三井財閥の益田孝は、当社が1890年に誕生した際の出資者の1人でした。当時の宮内省(現宮内庁)を筆頭に、三井、三菱、安田、大倉といった各財閥が国の威信をかけて出資しました。そんな歴史を振り返っても、三井不動産との縁には感慨深いものがあります。

 ─ どんな形での再開発を進めようと考えていますか。

 定保 タワー館は三井不動産との共同事業になります。同社の再開発のノウハウや知見を取り入れながら、商業施設とオフィスからの賃貸収入をしっかり確保して、財務基盤の安定化につなげていきたいと思います。一方の本館は我々の本業であるホテル業を極める。いかに“ザ・ホテル”をつくっていくかだと思っています。

 ─ 再開発で日比谷界隈もますます変わっていくと。

 定保 はい。再開発エリアは北ゾーン、中ゾーン、南ゾーンの3つに分かれており、我々の北ゾーンの敷地がこのうちの約3分の1強を占めます。中ゾーンはNTTグループなど、南ゾーンは第一生命、東京電力グループなどが関係権利者です。

 これらの再開発が順次完了していけば、人の流れがかなり変わると思います。日比谷公園側との連携もあり得るかもしれませんね。その中で我々が街区の中でシンボリックな存在になれればと思っているところです。

 ─ 様々な側面を持つ東京で、どんな特徴を持ちますか。

 定保 日本を代表するNTTや東電というインフラ関係の企業がいますから、IT技術等々を駆使した取り組みができるかもしれません。再開発には全部で10社が参画していますので、各社の特徴を生かして街区全体を盛り上げていく形になります。

 当然、SDGsに対する取り組みも重要課題として議論していますし、この街全体がエンターテイメント性も持っていますから、文化の面でも盛り上げていけると思っています。

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