2021-08-15

【東急】地下鉄の線路上部に歩行者デッキが誕生 進む「渋谷大改造計画」

地下鉄銀座線渋谷駅の上部に完成した「渋谷ヒカリエ ヒカリエデッキ」(提供:東急)

東京を代表するターミナル駅・渋谷駅。その渋谷に200メートルほどのデッキが誕生した。手掛けたのは東急だ。このデッキは将来、東の宮益坂と西の道玄坂を水平で結び、一度も地上に降りることなく移動することができるようになる。新宿や池袋でも改造計画が控える中、〝渋谷の宿命〟とも言われる谷地形をどう克服し、逆にどう長所に変えていくか。東急の渋谷大改造の中身を追うと……。

東西を結ぶ〝背骨〟が登場

「渋谷ではすり鉢状の谷地形をどう克服していくかが課題となっている。その課題を解決するため、再開発では縦動線の整備に加え、横の広がりも整備している」と語るのは、東急渋谷開発事業部開発計画グループ開発計画担当の齊藤慎太郎氏だ。

 100年に一度の大改造──。渋谷再開発では、こんな言葉が飛び交っている。そんなスローガンを体現する施設が新たに開業した。歩行者デッキ「渋谷ヒカリエ ヒカリエデッキ」だ。今回はビルではなく、建物の外に張り出した板敷きのデッキ。このヒカリエデッキは東急が2012年に開業した大型複合ビル「渋谷ヒカリエ」の3階と4階に面し、渋谷駅東口にある宮益坂と並行して整備された。

 長さは約190メートル。決して大動脈と呼べるレベルの長さではない。しかし、このデッキに数十億円とも言われる事業費を投じる東急にとっては渋谷大改造の大きな一歩になる。というのも、このデッキが「渋谷駅を中心に東西を結ぶ〝背骨〟の役割を担う」(同氏)からだ。

 ヒカリエデッキは将来、「渋谷駅地区駅街区開発計画(渋谷駅直上の超複合高層ビルの「渋谷スクランブルスクエア」など)」にて整備を行う歩行者動線「スカイウェイ」の一部になる。

 このほど開業したヒカリエデッキは宮益坂の青山付近から渋谷駅方面へとつながっているが、そのまま駅に渡ることはできず、明治通りの手前でヒカリエの中を通る迂回が必要になる。しかし、新たにスカイウェイができると、これが解消される。

 スカイウェイは駅方面に向かってヒカリエデッキを延伸する形で整備されていく。ビルの高さ4階に相当する銀座線の線路上空の高さのまま、JR山手線・埼京線などが走る線路と駅を渡り、反対側の複合ビル「渋谷マークシティ」まで伸びる。

 これにより、宮益坂から道玄坂まで「一度も地上に降りることなく移動ができる」(ビル運用事業部事業推進グループ価値創造担当課長補佐の浜本理恵氏)ようになる。この東西の水平移動が可能になるのは19年に開業した渋谷スクランブルスクエア〈第Ⅰ期・東棟〉の横で現在建設中の中央棟と西棟が完成する27年度を予定する。


「渋谷ヒカリエ ヒカリエデッキ」は将来整備される「スカイウェイ」の一部になる(提供:東急)

 そのためにも宮益坂の坂を解消させる役割を担うヒカリエデッキの整備は不可欠だった。ただ、新たな構造物を建てるための「公共空間が少ない」(齊藤氏)ことは大きな制約。そこで同社が注目したのが線路の上空だった。ヒカリエデッキは東京メトロ銀座線の線路の上部に人工地盤を敷いて整備。「地上を走る地下鉄の上部に歩行者デッキが架けられている事例は珍しいのでは」と同氏は語る。

 しかも、単にデッキを架けただけでなく、線路の上空を活用することで面積約3000平方メートルの空間も構築し、季節を感じられる植栽やベンチなども整備。休憩スペースとして活用することはもちろん、イベントスペースとしての利用も計画している。

 また、デッキの西端のヒカリエと面した店舗区画にはコミュニティFM「渋谷のラジオ」のサテライトスタジオが入居し、青山・表参道との接続点となる東端にはキッチンカーの出店や駐輪場を整備し、「日常使いができる」(浜本氏)環境を整える。

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