2021-08-23

鉄道業界初、東京メトロが車両の混雑「見える化」を本格運用へ

号車ごとの混雑状況はアプリで確認できる

上場で「最後の出物」との声も


 コロナ禍を機に、「3密」を回避する動きが高まる中、東京メトロが奥行を計測できる「デプスカメラ」と人工知能(AI)を用いた列車混雑計測システムを本格的に運用する。

「安全で快適な空間を事前に見つけてもらうことで、スムーズな移動を実現したい」と運輸部輸送課課長補佐の足立茂章氏は語る。メトロでは主要駅に設置したデプスカメラが駅を出発する列車内の混雑状況を計測。号車単位で車両内の混雑具合を計測し、利用者のスマートフォンなどにアプリを通じて列車混雑を4段階かつリアルタイムで通知。利用者は混雑時を避けたりできるようになる。

 まずは銀座線と丸の内線に導入して精度を高め、2021年度中を目途にメトロ全路線の主要駅に順次設置。これまで列車の混雑状況は車両の重さや駅ホームでの人による目視で把握するケースが一般的だった。JR東日本も車両の重量を基に混雑具合を割り出している。しかし、メトロの場合、「相互に乗り入れをしている他社の列車の混雑状況までを把握することは難しかった」(同)という。

 しかし、今回の仕組みは他社の車両内も計測できる。鉄道業界で初めての試みだ。もともとこのシステムは「混雑がひどかった東西線の混雑緩和のために開発した」(同)。しかし、コロナ禍で空いている車両を求めるニーズが出てき始め、「開発ペースも速まった」同)。

 メトロを取り巻く環境は大きく変わっている。20年度の輸送人員は19年度比34%減と厳しい状況が続いている。さらに大株主である政府と東京都がそれぞれ保有株式の半分を放出してメトロを上場させる方針が決定。「最後の出物」(関係者)とも言われるだけに、メトロの一挙手一投足に注目が集まりそうだ。

Pick up注目の記事

Related関連記事

Ranking人気記事