2021-07-30

【政界】ワクチン次第で任期満了選挙の可能性も 衆院9月解散を狙う菅首相が抱える内憂外患

イラスト・山田紳



〝諸刃の五輪〟

 これまで菅は「私の総裁任期の中で解散・総選挙を考えないといけない」などと語り、自身の自民党総裁任期が終わる9月末までに解散に踏み切る考えを示してきた。

 パラリンピックが閉幕する9月5日直後に臨時国会を召集し、衆院解散を断行するとの見方が広がる。永田町では「9月21日公示―
10月3日投開票」「9月28日公示―10月10日投開票」などの衆院選日程が、まことしやかに語られている。

 そうなれば、9月末までに実施する総裁選は先送りされ、衆院選に勝利すれば菅の無投票総裁再選が現実味を帯びる。ただ、地方選で苦戦を続けてきた流れを断ち切れないばかりか、今回の都議選で歴史的大敗を喫した前回から大幅な議席の上乗せができなかったことから、自民党内では「菅総裁で衆院選を戦えるのか」と不安視する声が広がる。

 今回の都議選は、コロナ感染が広がる中で、東京五輪の有観客開催に突き進む菅への不満が表面化したと見る向きがある。無党派層だけでなく、自民党支持層からも「無観客」を訴えた都民ファーストの会に票が流れたとされる。

 さらに、「都民のコロナに関する不安、不満が投票行動にも表れた」(自民党幹部)との分析もある。首相の「1日100万回接種」の号令の下、政府が大規模接種センターを開設するなどして接種は順調に進んでいた。

 だが、企業などの単位で接種を行う職域接種は申請が予想以上に多く、ワクチンが不足したことなどから新たな申請を受け付けない方針に転換した。そうしたワクチン接種を巡る対応が自民党の失速を招いたとされる。

 東京五輪は世界中が注目する一大スポーツイベント。開催すれば当然、感動と歓喜を呼ぶ。何事もなく閉幕すれば、経済活性化の足掛かりにもなり、五輪開催を主導した菅政権の支持につながる。ただ、菅にとって五輪は「諸刃の剣」にほかならない。

 東京では現在、感染リバウンド傾向がみられる。「第5波」の入り口にきているとも指摘される。政府は7月8日、4度目の緊急事態宣言を東京に発令した。期間は12日から8月22日までとなる。宣言下での五輪開催が決まった。東京だけでなく埼玉、千葉、神奈川3県の五輪会場が無観客となることも決定した。

 五輪に伴い人の移動が活発になれば、感染がさらに急拡大する可能性が高く、一部でも競技が中止に追い込まれるなどしたら、菅の責任を問う声が一気に噴き出すことになる。そのときには、もう菅に衆院解散を断行する体力は残っていないだろう。

 菅は7月8日の記者会見で、「ここで再度、東京を起点とする感染拡大を起こすことは絶対に避けなければならない。先手、先手で予防的措置を講ずる」と語った。ただ、6月の宣言解除からわずか3週間で再び発令する事態となったことへの危機感がにじんだ。

河北医療財団・河北博文理事長「コロナ禍の今、地域の病院と病院、自治体と病院の連携が共に重要」

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