2021-06-09

なぜ中部電力が世界最大級のレタス工場建設なのか?

「“食の安心・安全”に対するニーズの高まりから、衛生的な環境で、形や味、栄養を一定の品質に保った新鮮な野菜を栽培することが可能な植物工場に対する期待が高まっている」

 こう語るのは、中部電力社長の林欣吾氏。

 中部電力が静岡県袋井市で、世界最大規模となる1日10トンのレタスの植物工場を建設する。グループの不動産会社・日本エスコン(東京都)と植物工場の運営を手掛けるスプレッド(京都市)の3社で今年7月を目途に新会社を設立。日本エスコンが取得した約2万4400平方㍍の敷地に、10月から完全人工光型の自動化植物工場を建設。2024年1月の生産開始を目指している。

 近年、自然災害の被害が拡大傾向にある中で植物の栽培環境を屋内管理すること、そして農業従事者の人手不足や高齢化が顕著となる中、植物工場には少ない労働力で安定的に農作物を生産できるという利点がある。

 同社が手掛ける植物工場では、太陽光パネルを設置するなど、クリーンなエネルギーを活用。中電グループが持つ省力化などのノウハウを生かして、脱炭素化に向けた取り組みを進めていくという。

 ただ、一般的に植物工場を運営している会社で黒字化している企業は少ない。初期投資や管理・維持費にコストがかかり、出荷する植物も割高になりやすい懸念もある。中部電力も今回の投資額は公表しておらず、いかにコストを回収するかは今後の課題になるだろう。

「今回の植物工場事業を起点に、先端技術の活用による省力化や高品質生産などが可能なスマート農業に取り組み、地域農業の活性化および循環型社会の実現を目指していく」と語る林氏。

 電力自由化時代に入って経営環境が変化する中、新たな事業創造を急ぐ中部電力である。

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