2021-06-05

【コロナ危機下の不動産経営】賃借人からの中途解約に対する違約金請求 その2

(貸しビル事業者Q)弊社は、都心に新築したビルのワンフロアを、A社にオフィス用途、期間5年にて賃貸しました。契約書には、賃借人A社が期間満了の前に中途解約するときは、違約金として残りの期間の賃料を一括して支払うとの特約を付けました。ところが、契約から1年後に、A社は、「コロナ禍でのテレワークで賃借フロアが過大になった」などとして中途解約を申入れてきました。残りの期間の賃料の一括払いを請求できますか。

(弁護士A)前回は、東京地裁平成8年8月22日判決を挙げ、中途解約の違約金の相場は、残存期間の賃料全額ではなく1年分程度であろうとする見方もあることを紹介しました。しかし、賃借人がある程度規模のある会社で諸々の取引にも精通し、あるいは対象物件の賃借のニーズから違約金条項など十分理解した上で契約したような場合、残存期間の賃料全額を違約金とする特約を暴利行為ではなく有効と認める判例があり、貴社も参考にされるべきです。

 まず東京地裁平成20年1月31日判決は、賃借人はコンビニ営業する会社、期間10年間、中途解約の場合は残りの期間の賃料を一括して支払うとの特約のもと、賃借人が契約から3年未満で中途解約したケースですが、本特約は、賃借人が、対象建物でのコンビニ営業の機会を競争他社との競争で勝ち取るために敢えて条件提示をし、賃借人が期間10年分の賃料収入を賃貸人に確保させるべく特約を結んだものと認定して、中途解約の場合の残りの期間の賃料全額相当の賃貸人の損害を填補するものとして有効である、としています。

 もう一つ、東京地裁平成22年6月24日判決は、賃貸人は大手不動産会社の組成したファンド会社、賃借人はブリヂストンの子会社、期間3年、賃借人は中途解約ができないが、期間満了までの残存期間の賃料を一括して支払う場合は中途解約できるとの特約のもと、タイヤ用の倉庫を借りるも、3カ月後に中途解約の申入れをしたケースですが、賃借人は、残存期間の賃料支払義務を免れないことを認識して契約締結したと認定し、更に、賃貸人が新たな賃借人と賃貸借契約を締結して旧賃借人からの賃料の他に賃料をダブルで取る場合もあることを当然に予想していたとまで認定しました。そして、賃貸人が解約後に第三者に賃貸して賃料を取っていても、賃借人に対する残存期間の賃料請求は許される、と判示しています。

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