2021-05-23

【著者に聞く】日本工業新聞社社長・鶴田東洋彦 著『コロナに勝つ経営 逆風に立ち向かうリーダー達』

『コロナに勝つ経営 逆風に立ち向かうリーダー達』 鶴田 東洋彦/松岡 健夫 共著 日本工業新聞社 1650円(税込)


「世界経済の構造が変わる中、来るべき時代を見据え、乗り越えるトップの言葉」をまとめた1冊

 経済記者を長くやると「経営者というのはつくづく孤独な仕事だな」ということが痛いほどわかります。自身の記者生活を振り返ってみても、周囲の意見や過去の事例などと向き合いながらトップが経営判断に悩み、苦悩する姿を何度か見てきました。ところが、コロナ禍はそうした次元とは全く異なる事態です。経験則なき国難です。だからこそトップの本音を聞きたいと思い、まとめたのが本書です。

 改めて思いますが、わずか1年半の間に世界で1億4000万人あまりが感染、300万人が亡くなるような事態を誰が想像したでしょう。後手に回った政府の感染対策、医療体制の脆弱さ。はからずもコロナは、こうした未曽有の危機に対応できない日本と言う国の脆さもさらけ出す結果となりましたが、どんな時でも言い訳が許されないのが経営であり、経営者です。

 本書に登場する21人の経営者の言葉を振り返ると、月並みな表現ですが「強靭な意思」というものが、そこに貫かれていると感じます。例えば勤務形態の変化、業務へのAI(人工知能)の浸透、さらなるDX化。おそらくこのコロナの時代、さらにはコロナ後の世界が企業環境を大きく変えていくのは間違いありません。もう後戻りはできないのです。

 そうした時代に立ち向かっているトップの覚悟は、生半可ではないと痛感させられました。よく経営は生き物だと言いますが、その心臓は経営者の気概です。先輩経営者の誰もが経験したことがない、この未曽有の国難の時代をどう勝ち抜くか、21人の言葉の端々にその気概があります。

 コロナ後、世界経済の構造が驚くほど変化するのは確実です。世界のブロック化は進み、既存のサプライチェーンは見直され、貿易構造も根底から変わります。ですが登場するトップの言葉には、来るべき時代を見据え、乗り越えるという迫力があります。その気概、迫力の一端を是非、本書から汲み取っていただければと思います。

日本工業新聞社社長
鶴田 東洋彦
Turuta Toyohiko

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