2024-03-15

「われわれの狙いは産業競争力の強化」産業革新投資機構・横尾敬介の『日本再生論』



経営統合や成長投資を通じて産業競争力の強化へ貢献



 横尾氏は旧日本興業銀行(現みずほ銀行)出身。大学時代に「天下国家を議論するのが好きで、日本を動かす仕事がしたい」と考え、当初は政治家を目指していた。ところが、両親が大反対したため、日本経済や産業を支える中心的な役割を果たしていた興銀に入行した。

 その後は、みずほ証券社長や経済同友会の専務理事をつとめ、19年にJIC社長に就任。数回断ったそうだが、「天下国家とか、お国のためと言われると弱い(笑)」性格も相まって、社長職を引き受けることになった。

「社長をお引き受けする際、責任を明確にするために、わたしが最初に言ったことは、当然、国家の産業政策に沿った投資を行うが、JICの独立性が保たれないと、民間の活力は引き出せませんということ」(横尾氏)

 産業革新投資機構(JIC)は2018年、産業競争力強化法に基づき、産業競争力の強化と民間投資の拡大という政策目的の実現に寄与するべく発足した投資会社。民間だけでは投資対象になりにくい分野に、民間資金の呼び水となって、傘下のファンドや民間ファンドへの投資を通じて、政策的に意義のある事業分野へリスクマネーを供給。国際競争力向上に寄与することを目指している。

 政府は今国会にも、産業競争力強化法を改正し、JICの運用期限を現在の2034年から2050年まで伸ばす方向で検討している。期限が伸びることで、JICにはエネルギーや宇宙など、より長期的な観点での投資が期待されている。

 また、政府は22年に「スタートアップ育成5カ年計画」を策定。現在、1兆円規模のスタートアップ投資額を27年度に10兆円に増やす方針で、JIC傘下のJIC VGI(ベンチャー・グロース)は累計64件に投資(昨年12月時点)。ここから上場企業が4社生まれている。

「オープンイノベーションの領域に視野を置き、スタートアップを増やしていくことは、日本の活性化において大事なこと。やはり、民間がなかなか投資できない足の長いプロジェクトにコミット(関与)できるのが官民ファンドの役割だと思う。民間がやれるものは民間がやり、われわれの仕事は民間の活力を引き出すことにある」と語る横尾氏。

 産業競争力の強化に向け、官と民、それぞれの役割が問われている。

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