経済安保は出口が無いが投資ファンドには出口がある
JSR、新光電気の相次ぐ買収によって、一気に半導体再編のキーマンとなったJIC。それでも、横尾氏は再編が目的ではないという。
「あくまでも再編が目的でなく、再編は手段。目的は業界の産業競争力を世界的なトップレベルに持っていくことであり、一部メディアに出ているように、JSRと新光電気を一緒にしようという考えはない」(横尾氏)
近年は米中対立などもあり、岸田文雄政権は「新しい資本主義」政策の中で、半導体を経済安全保障上の重要物資と位置付け、国内投資の拡大とサプライチェーン(供給網)の強靱化を打ち出した。
現在は世界中が、戦略的物資である半導体の確保や先端技術の獲得にしのぎを削り、さながら投資合戦・有力企業の誘致合戦といった様相を呈している。
そうした中、日本もすでに台湾積体電路製造(TSMC)の誘致や次世代半導体の国産化を目指すラピダスの支援を打ち出しており、JICによる一連の買収もその一環。
ただ、横尾氏は経済安全保障という観点だけで買収を決めたわけではないと強調する。
「経済安保は出口が無いから、一度お金を入れると、補助金や助成金という形でずっと投じ続けなければならない。しかし、投資ファンドはあくまでも出口があり、必ずリターンを出す必要がある。だから、結果的に経済安保につながる投資になるかもしれないけど、安全保障だから投資してくれというのは筋が違う。われわれとしては、あくまでも民間の力を活用して、出口があって、リターンが出るかどうかが大事」(横尾氏)