2024-01-24

ANAHDが進める〝バーチャル旅行〟ビジネス  「リアルの旅を楽しめてこそ…」

リアルとバーチャルをつないだ新しいメタバ-ス旅行体験ができる「ANAグランホエール」



航空事業への波及効果

 もう1つが本業の航空事業への波及だ。「リアルな航空会社のANAがバーチャル旅行を提供したら飛行機に乗らなくなるのではないかと言われるが、全く逆だ」─。このように話すのはANAグランホエールの開発・運営を担うANA NEO社長の冨田光欧氏だ。

 冨田氏によれば、旅の価値とは、現地を訪れて、独自の体験をし、地元の人と会話をすることだが、「それらはバーチャル空間では再現できない」と話す。むしろ、バーチャル空間で旅先の良さを知り、リアリティを感じれば感じるほど、逆に現地に行きたくなると強調する。

 そうなれば、ANAの飛行機を使ったリアルな移動の需要が創出される。「メタバースのサービスで旅行を体験しても、リアルの旅の価値は絶対に下がらない」(同)というわけだ。コロナ禍でデジタル空間が広がり、旅行に行かなくなるといった声も出ていたが、現実にはそうなっていない。

 もちろん、コロナ禍で旅行需要の蒸発という危機に直面したANAHDにとって〝航空一本足〟の経営にはリスクがある。同社社長の芝田浩一氏は「メタバース事業のメインターゲットは東南アジアや欧州などの外国人。メタバースを通じてANAのブランドが高まれば、本業の航空に還流してくる」と話す。

 同社は今後数年で売上高のうち非航空事業を足元の約2000億円から4000億円に引き上げる計画を掲げる。ANAグランホエールも現在は日本や東南アジアなどの利用者が対象になっているが、今後は北米や欧州での展開も予定している。

 ANA NEOは既にNFT(非代替性トークン)事業への参入も発表しており、ANAグランホエールと合わせて、今後は〝バーチャル体験〟を軸に、この2つのサービスの連携・融合を図っていく考え。その先には教育や行政サービスといった分野が集合する「Skyビレッジ」構想にもつなげていく。

 世界初の取り組みとなるANAグランホエール。リアルとバーチャルが相互に刺激・融合して航空事業を拡大させることは間違いなさそうだ。

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