2023-12-27

【2024年をどう占う?】答える人 東京ガス社長・笹山晋一

笹山晋一・東京ガス社長

責任あるトランジションを!



 ─ 東京ガス社長の笹山晋一さん、足元のエネルギー安定供給と長期的な脱炭素化の両立という使命を担っているわけですが、いま、どういう考えでエネルギー変革に取り組んでいますか。

 笹山 ええ。当社は現在、「第三の創業期」を迎えています。

 第一の創業は文字通り、1885(明治18)年の創業です。

 第二の創業は約50年前に地域環境問題を解決につなげようと考え、天然ガスを導入したことです。同時にお客様の数も爆発的に増えていた時期でもありましたので、コンピューターを使って効率化を進めていった時代でした。

 そして、現在は、地球環境問題を解決につなげる脱炭素化とデジタル活用によるビジネスモデル変革という、まさに第三の創業と認識して取り組みを進めています。

 また一方では、ロシア・ウクライナ問題や中東でのパレスチナ問題など、様々な地政学リスクが高まっており、エネルギーの安定供給も併せて求められています。

 ─ エネルギー自給率の低い日本には地政学リスクと向き合う覚悟が要求されると。

 笹山 ええ。そうした状況を踏まえた上で調達先や契約条件、商流の三つを多様化し、いかに安定供給を確保するかだと思います。加えて、われわれは「責任あるトランジション(移行)」ということを掲げていまして、当面はCO2(二酸化炭素)の大幅削減に貢献できる天然ガスを最大限活用しながら、徐々に再生可能エネルギーを増やしていきます。現在は太陽光やバイオマスが中心ですが、この先、一番ポテンシャルが大きいのは洋上風力です。

 日本は遠浅の海域が少ないため、水深の深い場所でも設置可能な「浮体式」が中心になると思います。これから技術やコストなどの課題を克服しながら、洋上風力に力を入れていこうと考えています。

 ─ 現実的な移行方法を考え、徐々に再エネにシフトしていくということですね。

 笹山 はい。加えて脱炭素化に向けて取り組んでいるのが、再エネから作るグリーン水素と発電所や工場等から排出されるCO2や大気から回収するCO2を合成してつくる「e―メタン」です。e―メタンを燃やすとCO2が発生しますが、それと同量のCO2を回収し、e―メタンの原料とするので、大気中のCO2は実質増加しません。

 さらにe―メタンは都市ガスの既存のインフラや消費機器をそのまま活用することが可能なので、経済的にも優位な脱炭素化手法と思っています。まずは30年に現在の都市ガス需要の1%に相当する量をe―メタンに置き換えます。

 このような取り組みを通じ、安定供給と脱炭素化の両立を実現したいと考えています。

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