2023-12-15

丹青社社長・小林統「空間づくりに完成形はない。自分自身も未完成のつもりで賑わう空間の創造を」

小林統・丹青社社長

複合商業施設や国立博物館などの大型施設から新業態専門店の多店舗展開、事業領域を超えた多用途の空間なども含めて年間6000件を超えるプロジェクトを手掛ける丹青社。内装と言えば簡単だが、その中身は営業、デザイナー、制作といった各部門の「三位一体の連携から創造される」と2023年4月に社長に就任した小林統氏は強調する。今では設計前の調査から施設運営まで一気通貫での依頼も。万博に長く携わった経験を生かし、26年の80周年に向けてどんな成長軌道を描こうとしているのか?

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2026年は創業80年

 ─ 2023年4月の社長就任から8カ月が経ちました。この間の総括はいかがですか。

 小林 まだまだコロナ禍の影響を引きずっています。ですから、完全に払拭できている状況にはありません。その中で私が社長に就任したときから申し上げてきたのは、まずは事業基盤の再生を最重要課題としたことです。23年は3カ年の中期経営計画の最終年に当たります。

 まずはこの中期経営計画をしっかり計画通りに進めて、何とか目標を達成したいと考えているところです。コロナ前の20年1月期の業績がピークでしたので、少しでも早くその水準に戻したいと思っています。そして、いま策定をしている24年2月からの新中期経営計画につなげていきたいと思っています。

 ─ 丹青社の創業は1946年ですね。2026年には創業80周年を迎えますね。

 小林 ええ。これまでの歴史の中で、当社は社会の変化・ニーズの変化に真摯に向き合いながら、クリエイティビティや技術に磨きをかけてきました。今まで培ったノウハウを活かす一方で、ずっと当たり前と思っていたところにこそ変革の可能性があると考えています。

 ただ課題もあります。まずはコスト高です。今はインバウンド(訪日客)が復活してホテル業界は隆盛ですが、資材が値上がりし、人手不足で物流費や人件費も上がっています。見積もりも2~3割増しになるケースもあります。そしてもう1つは24年から始まる働き方改革です。労働に対する規制がかなり強まります。

 ─ 空間づくりを担う制作部門にも影響は出ますか。

 小林 そうですね。それからデザイナーもアイデアを考えれば考えるほど時間を使います。例えば、電車に乗っていたときにアイデアが思いつくこともあります。では、その時間は勤務時間なのかと。あやふやな部分をどのように棲み分けるのかが課題です。

 ─ 創造、クリエイションに関わる事業になりますからね。

 小林 ええ。そういったコスト型の働き方を改革していかなければならないでしょうね。新卒採用人数の見直しやキャリア・リファラル採用など、増員も検討しないといけないかもしれません。

 いずれにしても、当社にとって人は経営資源です。人で仕事をさせていただいています。工場を持っているわけでもありませんし、機械の設備投資をしているわけでもありませんからね。昨今言われている人的資本の最たる業種になりますから、自ずとコストは上がると思って今は計画づくりを進めています。


営業、デザイナー、制作の役割

 ─ 空間づくりにおいては、営業、プランナー・デザイナー、制作といった部門がありますが、プロジェクトごとのコスト調整も難しいですか。

 小林 そこで今はチームプレーで、三位一体のワンチームづくりに力を入れています。お客様の要望やレギュレーションを把握した営業が仕事の引き合いをいただきます。そして、デザインは基本的にコストや予算ありきになりますので、その中で予算に見合い、かつ、パフォーマンスが十分に発揮できるようなデザインプランを立てます。この見積もりをするのが制作です。

 ですから、営業、デザイン、制作が三位一体で連携していなければお客様に満足していただくものはできません。デザインに渡したからといってデザインから予算通りのものが出てくるわけではありませんし、デザインも図面を書いたから、あとは制作でうまくやってくれといってもコストの兼ね合いがうまくいくかどうかは分かりません。

 各部門がしっかりと調整していく必要があります。そのインターフェースが最も重要です。営業とデザインもお互いをしっかりフォローし合いながら連携すると。当然、途中でコスト調整の必要性も出てきます。そういう意味では、これからも深い連携が求められてくるのではないかと思っています。

 ─ 昨今はバーチャル空間といった新たな概念も出てきています。この新たな考え方にはどう対応していきますか。

 小林 そもそも皆さんがイメージする空間づくりとは何か。分かりやすく言えば内装です。イベントであれば、そのイベント会場でしょう。皆さん、ハードをイメージするわけです。そう考えると、バーチャル空間は主戦場ではないと思っています。我々の主な仕事は人ありきでの空間づくりだからです。

 ただ、バーチャルを活用した空間づくりはとても重要です。例えば、デジタル上でリアルな空間を再現するデジタルツインなど、リアルをデジタルで検証できるような連携の仕方などがあります。そういうことは、どんどんやっていかなければならないと思っています。ですから、我々にとってバーチャルは、より良い空間づくりの手段になるのではないかと思います。

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