今春から、全ての上場企業が人的資本の情報開示を義務づけられるようになった。機関投資家が企業に対して、女性管理職比率や男性の育児休業取得率、男女の賃金の差異など、財務指標以外の数値、いわゆる、人的資本の数値の開示を強く求めるようになったからである。
人的資本とは、人材をコストではなく、競争優位や企業価値創造の源泉である資本とし、投資すべき対象ととらえる考え方。こうした流れを踏まえ、三井物産は9月に『人的資本レポート2023』を初めて発行した。
平林氏は「日本にとって、2023年は人的資本開示元年と言っていい。当社が創業以来、『人』こそが持続的な価値向上の源泉と考え、人材主義や人材投資を重視してきたことをしっかり示す。そして、人的資本に関するデータを可能な限り連結ベースで示すと共に、人材戦略や施策が当社の価値創造につながる構図を示すことで、ステークホルダーの皆さんにご理解を深めていただきたい」と語る。
「人の三井」と評される三井物産は、いかに人的資本経営を実効性のある取り組みへつなげていくのか。多様な人材が各々の潜在力を発揮するための職場づくりへ、同社の挑戦は続く。