創業理念や経営戦略と連動した人材戦略を
近年、企業のパーパス(存在意義)が問われるようになった。企業は何のために存在し、事業を展開するのか。そして、人は何のために働くのか─―。
旧三井物産初代社長・益田孝の「すべては人から始まる」という言葉を原点とし、〝人〟を重視した人材戦略を展開してきた三井物産。1876年に創立された旧三井物産は1947年に解散しており、現在の三井物産と法人格は異なる(法的には全く別個の企業体)が、創立時の精神は今も引き継がれている。
現在、同社が人材戦略の中核に据えるのが『強い「個」の育成』。世界中でビジネスを手掛ける商社だけに、入社5年目時点に41%、10年目時点で78%が海外を経験している。
できるだけ若いうちに海外経験を積むため、同社では独自の『海外研修員・修業生制度』を設置。語学習得だけでなく、その国の文化への理解を高めることや人的ネットワークの構築を目的とし、英語圏以外を主とする国へ若手社員を派遣。戦後すぐの1952年から始まった海外派遣制度は累計2793名の社員が同制度を活用している。
「当社は創業者・益田孝の時代から、人について相当フォーカスしてきた会社。人の育て方や人の活躍の場の提供の仕方をきちんと説明できれば、差別化の要因になるだろうと。三井の社員が現地で頑張って働いているのは、こういうところに源泉があるのだということをご理解いただければ」(平林氏)