2023-10-13

帝国データバンク情報統括部長・藤井俊「ゼロゼロ融資が返済できない企業の倒産や、 倒産予備軍がさらに増加する可能性がある」

帝国データバンク情報統括部長・藤井俊


倒産予備軍の増加を示唆する「代位弁済件数」



 ─ そうなると、ゼロゼロ融資の返済や人手不足による倒産などは今後もしばらく続きそうですか。

 藤井 そうでしょうね。それとよく見ておかなければならないのが、全国信用保証協会連合会が毎月公表している「代位弁済件数」です。

 ゼロゼロ融資は信用保証協会の保証付きでお金が出ているため、仮に貸し倒れが発生しても保証協会が代位弁済という仕組みで、返済を肩代わりしています。ある企業が返済に行き詰まって倒産しても、金融機関にとってのリスクは小さいという仕組みなのですが、この代位弁済の件数が増加しています。

 今年7月の代位弁済件数は増勢基調を強めており、3746件となり、前年同月(2383件)を大きく上回りました。代位弁済件数の増加は資金繰り難に直面した、いわゆる倒産予備軍の増加を示唆しており、企業倒産がさらに増加するシナリオも考えられると思います。

 ─ なるほど。倒産予備軍が増えている。

 藤井 ええ。ですから、今後は収益力が回復せずにゼロゼロ融資が返済できない企業の倒産や、今から年末にかけて資金繰りが厳しくなる企業がさらに増加する可能性がありますね。

 ─ これは難しい問題ですね。結局、資金力や体力のある大企業はまだいいとしても、日本の99%を占める中小企業をどうするか? という話ですね。

 藤井 仰る通りです。中小企業が人手不足だから人を採用しようと思っても、賃金が低ければ、いくら募集をかけても人は来てくれません。当然、賃金を上げるためには生産性を向上して、収益を上げなければなりません。ところが、まだ大企業から値上げを認めてもらえないため、なかなか中小企業は価格転嫁できないわけです。

 この他、人手不足や賃金、生産性向上、円安など、企業を取り巻く課題は沢山あります。企業はそうした課題を一つひとつクリアして、従業員から選ばれる企業にしなければならない。

 最近はエンゲージメント(働きがい)などと言われますが、企業は単に資金力を付けるだけでなく、賃金も含めた働き方改革など、待遇面の改善も必要なのだと思います。

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