2023-10-03

【株価はどう動く?】短期サイクルの「上昇第2波」始まる、バブルの高値が当面の目標に

上昇相場は本物か?

大企業の8割が業績上振れも

 8月24日から26日に米国で行われた「ジャクソンホール会議」で、FRB(米連邦準備制度理事会)のジェローム・パウエル議長の発言が注目されていました。タカ派的発言か、穏やかなタカ派的発言か、あるいはハト派的発言かという3つのシナリオが見通されていました。

 FOMC(米連邦公開市場委員会)の場でも、引き続きインフレを懸念する声が強かったですから、ハト派的発言はないと見られており、どの程度タカ派的発言をするかに市場の注目は絞られていました。

 フタを開けてみたら、大方の予想通り、穏やかなタカ派的発言でした。依然としてインフレは警戒するけれども、さらなる引き締め、利上げのメッセージはありませんでした。ですからジャクソンホール後、日米の株式市場は上昇しました。

 日経平均は3つのシナリオが見通されていました。第1に8月18日の安値3万1275円を下回るかどうか。これは前回指摘したように半値押しで、3万円割れもあり得るような調整がやってくるというものです。

 第2に、8月18日の安値を下回らないものの、6月19日の今年の高値、3万3772円をなかなか抜けず、横ばいが続くというものです。

 第3に、8月18日の安値を下回らず、むしろ株価は上昇するというシナリオですが、足元ではこの第3のシナリオで株価は動き始めています。

 その意味で、8月18日の3万1275円が「底」である可能性が出ています。9月5日には久方ぶりに3万3000円台を回復したことも、その理由です。

 この背景として、2024年の大企業の決算見通しで、8割が上振れしそうだということがあります。その要因は円安です。

 以前から指摘してきましたが、円安は日本経済、株価にとって大きな追い風になっています。テレビ番組などメディアに登場しているエコノミストや学者などの専門家の中には、今も円安は自国通貨の価値の下落だとして批判する向きが強いわけですが、日本の経済状況、世界経済の情勢を踏まえて、「いい円安」なのか、「悪い円安」なのかを判断する必要があります。

 理論通りに考えても、マーケットの予測は当たりません。ですから相場世界では「理外の理」という格言が言われてきました。通常考えられる理屈通り、計算通りには相場は動かないのだということです。

 今回は「いい円安」だと見ており、この30年ぶりという円安が追い風となり、日本の大企業の業績は極めて好調です。これは株高の大きな要因ですが、それ以外に今、株式市場でどういうことが起きているか。

 前述のように、9月5日に日経平均は3万3000円台を回復しましたが、東証プライム市場の銘柄の約4割が新高値を付けたのです。これは完全に流れが変わっていることの表れです。これまで説明してきた通り、短期サイクルの「上昇第2波」が始まったと見ています。

 当面は年内、3万5000円を目指す相場で、その出発点は、8月18日の3万1275円ということになります。そして向こう半年から1年の間に、バブルの高値、3万8915円を目指す展開を予想しています。

 では上昇第1波がどこからだったかというと、23年1月4日の2万5661円です。ここから上昇して6月19日に3万3772円を付けて、短期波動の上昇第1波が終わったわけです。

 上昇第1波では8111円上がっていますが、その後、8月1日に3万3488円を付けて二番天井を打ち、その後下落して、8月18日の3万1275円を付けたという流れです。ここが出発点ならば、目標値は安値に8000円を足す水準で、これが3万9000円近辺です。

 時間の波動から見て、1年上げるならば来年の8月、9月に高値を付けるでしょう。一番早いケースでは半年、約数カ月の日柄が意識されますが、その場合は年末年始ということになります。おそらく、年内には6月19日の高値3万3772円を突破し、3万5000円前後を付けるのではないでしょうか。

 株価が上昇する時にはきっかけ、エポックメイキングが必要です。この火付け役は、今年4月からの賃上げです。今は円安に後押しされた「賃金インフレ相場」が始まっています。

 円安メリットを大きく受ける輸出産業だけでなく、国内消費も盛り上がってきています。その要因はインバウンド(訪日外国人観光客)の拡大です。

 この傾向が続くことによって、日本の株価は上昇を続け、思った以上に早く、バブルの高値を超える4万円台を付ける可能性があります。しかも、これはあくまでも通過点です。おそらく10年、20年、30年に一度という大相場が始まっているのではないかと見ています。

 今、日本は30年以上続いた長いデフレのトンネルを抜けようとしています。そしてすでに足元では脱デフレを織り込んだ「資産インフレ相場」が始まっています。ここで資産インフレの波に乗る人と、乗れない人の資産格差は、次の3年に一層広がることになります。

 その意味で、どんな職業に就いているかにかかわらず、誰もが資産形成への意識を持つべき時代です。米国ではすでに、その流れが顕著で株式や不動産を持っていない人は、給与が上がらないままで物価上昇のダメージを受け続けているのです。

 米国ではホームレスが急増するとともに「食料品」のみ購入できる金券「フードスタンプ」をもらう低所得者層が増えています。これは近未来の日本の姿かもしれません。

 ただし、米国が他国と違うのはゲームの「胴元」だということです。今はコロナ禍を受けたマネーバブルですが、かつての「ニクソンショック」のように、米国はこのルールを変えようと思えば変えられる存在です。

 そして情報通信時代の技術革新の先頭ランナーですから、米国から新たな技術が出てくる可能性が強い。米国の株価が頭打ちになっても、技術革新銘柄は上がる可能性が高いのです。そして日本はグロース、バリューともに株価の底上げが続きます。

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