2023-10-04

日本生命保険社長・清水博氏に直撃!「対面の機会をより増やすと同時にデジタルのスキルを 高め、課題を乗り越えていく」

清水博・日本生命保険社長

「3年のコロナ禍が会社に与えた影響、ダメージは相当大きい」─日本生命保険社長の清水氏はこう振り返る。5万人の営業職員を擁し、「対面」を軸に事業展開をしてきたが、コロナ禍でデジタルも組み入れた活動への転換を進めてきた。「今は過渡期にある」としながら、ゆくゆくはデジタルを活用して成果を上げる営業職員の登場を期待。人々のニーズが多様化する中、これからの生保の役割は─。


米国のインフレが収まらない中で

 ─ 米国のインフレ、中国の景気悪化など、世界経済を巡る状況は非常に不透明ですが、現状と今後をどう見ていますか。

 清水 インフレが思った以上に強く、例えばFRB(米連邦準備制度理事会)の対応するタイミングがよかったのかどうかという議論があります。

 その後、段階的に、これまでなかった以上に政策金利を上げて、インフレを退治にしにいっていますが、いわゆる「スティッキー・インフレ」(Sticky Inflation=しつこいインフレ)で、なかなか収まらないと。

 ただ、景気は後退することなく、軟着陸するのではないだろうか?という見方が強いですが、多くの人がそう思っている時は、少し慎重にならなければいけないなという形で心配するのが、我々保険会社の役割でもあると思います。

 FRBの金融政策が効果を与えて、インフレが収まり、アメリカの景気が軟着陸するかどうかが世界経済にとって一番大きいポイントではないでしょうか。

 ─ 中国は、1978年の改革開放以来、初めてと言っていいくらいの景気悪化に直面していますが。

 清水 ええ。当然、足元の中国の景気、先行きの問題、不良債権の問題など、様々な不透明な要素がありますので、多方面にわたって予断を許さない、そういう情勢だと思います。

 ─ そうした状況下、日本銀行は総裁が植田和男氏に交代して以降、YCC(イールドカーブ・コントロール=長短金利操作)政策の変更などで動いてきています。金利の動向は生保経営にも影響を与えるものだと思いますが、どう見ますか。

 清水 金融政策自体は日銀の専管事項ですので、これがいいか悪いかについてはコメントできません。

 ただ、植田総裁が就任されて以降、物価上昇が一定程度安定的に続いて、経済成長と賃上げが継続的に行われるような経済にしていく、それまでは金融緩和は続けていかなくてはいけないというはっきりとした方針が打ち出されました。YCCの柔軟化は行われましたが、基本的には金融緩和を維持されています。

 その上で、YCCの柔軟化は、債券市場が低金利のままですと、需給バランスで、なかなか市場が機能しません。ですから、この市場機能の回復を狙ったものであろうということで、これは機関投資家としては歓迎すべきことだと思っています。

 今後は、この市場機能の回復と、緩和的な金融政策が、どのように方向転換されるのか。これに注目したいと思います。

 ─ 一般論ですが「金利がつく時代」は、日本経済にとっていいことだと言えますね。

 清水 間違いなくいいと思います。ただ、それに対して、日本生命を含めた経営者が、継続的な賃上げを行わなければ、実質的な賃金が下がりますので、収益力を背景にした継続的な賃上げができるような経営に、それぞれの経営者が持っていくこと。これが重要なキーの1つだと思います。

 ─ 日本企業、日本経済が成長していくことが大事だと。

 清水 そうです。この春闘で多くの企業が賃上げに踏み切ったことは、これまでの流れを変えて、次の成長に向かったという第一歩です。これが第一歩だけで終わらずに、二の手、三の手、継続的な賃上げを打ち、第一歩だけで終わらせてはいけないと思います。

 ─ 企業の中には賃金を40%上げるところも出るなど、様々な工夫が出ていますね。

 清水 企業ごとに、企業の状況に応じた賃上げの仕方があって然るべきだと思います。

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