2023-10-04

日本生命保険社長・清水博氏に直撃!「対面の機会をより増やすと同時にデジタルのスキルを 高め、課題を乗り越えていく」

清水博・日本生命保険社長




社内に「デジタル化」への抵抗もあった中で…

 ─ 清水さんは社長に就任して6年目に入っていますが、嬉しかったこと、つらかったことも含め、振り返ってどんなことを感じますか。

 清水 私は社長に就任する時に3つのテーマを掲げました。1つ目は収益力の強化です。この実現には保険の販売力、運用力、リスク管理体制の強化が重要だと考えて取り組みました。

 2つ目は変革の推進です。これはとりわけデジタライゼーション、新規事業への取り組みです。3つ目はグループ強化です。

 この3つのテーマに沿って5年間、運営してきたということです。それぞれに手は打てているとは思いますが、3年のコロナ禍が会社に与えた影響、ダメージは相当大きいなと感じています。とりわけ、対面を中心とする営業職員チャネルに対して、この3年間、与えられた影響は大きいと思います。

 ─ 営業職員が顧客に会えない時期が続いたわけですが、どう対応してきましたか。

 清水 もちろん、それを克服すべく、3年間で一気にデジタル化を進めてきました。今や、当社の5万名の営業職員はデジタルを使いこなす集団になっています。ただ、まだまだコロナの後遺症のような形で、お客様と対面でお会いする機会が減少したままです。

 一方で、最初から契約締結までデジタルで完結するようには、まだ我々の試行錯誤が必要です。その意味で過渡期にありますから、対面の機会をより増やすと同時にデジタルのスキルを高めていく。対面にデジタルをプラスアルファしていくことで、従来以上に販売力が強まっているという形にできるだけ早く持っていくことが、今の課題です。

 ─ この間、営業職員の人達の働く意識、働きがいに変化はありましたか。

 清水 コロナ前から従業員の意識実態調査をやっています。例えば、「日本生命はお客様にとって重要な事業をしている」、「意味のある商品、サービスを提供している」といった問いに対して、従業員が「本当にそう思う」と答える割合は、コロナ前から高かったのです。

 おそらく、コロナによっても営業職員は同じように、生命保険事業に携わることの重要性は、より強く確認したことは間違いないと思いますから、これが我々の依って立つところです。

 なかなか簡単な仕事ではありません。しかし、生命保険事業の意義や、お客様に対して保険の重要性をお伝えする使命感が我々の力となり、商品、サービスをお届けし続ける活動を支えています。

 ─ 実際に現場を回って、営業職員などと接する中で、感じたことはありますか。

 清水 正直に言えば、これまで130年以上、営業職員に対して対面でお客様にお会いすることの重要性を言い続けてきました。ですから、その中にデジタルを組み込んでいくということへの抵抗、様々な意見が社内であったことは事実です。

 しかし、その議論を尽くした上でデジタルを入れなければいけないという形で踏み切ったわけです。ただ、当初は心配しましたが、営業職員から「デジタルを入れてくれてありがたい、助かった」という声が多く出てきています。

 ─ 実際、デジタルがあったことで、顧客との新たな接点を持つことができたということは言えそうですね。

 清水 とりわけ年齢に関係なく、新しく入社してくる方々はデジタル、スマートフォンを使いこなす人が増えています。「これがなければ仕事ができない」とはっきりと言われていますから、そこは心配することはなかったなと。

 これによって、これまで対面で素晴らしい業績を上げてきた営業職員は、今後も対面での活動を中心に活躍し続けてもらうとともに、ゆくゆくはデジタルだけで対面の成果を超えられるような営業職員が出てきて欲しいということを、至るところで言っています。

 ─ 24年から「新NISA」が始まります。運用への関心がこれまで以上に高まっている中、資産形成向けの商品を取り扱っている生命保険会社に対する期待もあろうかと思いますが、どう対応しますか。

 清水 新NISAは相当盛り上がっていますから、資産形成手段として間違いなく、相当なスピードで拡大すると思うんです。そうすると短期的には、これまで生命保険商品で資産形成を行ってきた方々が、生命保険ではなくNISAの方で資産形成をする動きになると思いますから、おそらく短期的には我々も影響を受けると思うんです。

 ただ、長期的に見れば、間違いなく資産形成に対するニーズや裾野、関心は広がりますから、NISAに限らず、生命保険で資産形成をしていく方向に目が向いていくことは間違いありません。

 ですから、その中長期的にプラスとなる面を捉えて、生命保険会社としても資産形成ニーズに応えられるような商品ラインナップを増やしていかなければなりません。これが重要な課題です。

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