2023-10-08

【青春座談会】我らが母校・東海高校の良さと伝統を語ろう!

左から、高岡本州・エアウィーヴ会長兼社長、廣田康人・アシックス社長、加藤勝彦・みずほ銀行頭取、柴原慶一・アンビスホールディングス社長

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日本の成長に向けたそれぞれの思い

 ─ ところで廣田さんは今、アシックスの社長として人々の健康ニーズに応え、世界に打って出ていますね。

 廣田 寿命は延びていますが、その中で健康寿命と寿命の差をいかに縮めるかが非常に大きな課題になっています。これには運動習慣が重要ですから、我々は何らかの形で運動ができる環境づくりを日本のみならず全世界で進め、その先駆者になりたいと考えています。

 心身の健康は、やはり体を動かすことによって生まれます。スポーツを通じて、心身ともに健康な一生を過ごせるような世の中に貢献していきたいと思います。今、この流れは全世界的に来ていますから、ビジネスとしてもしっかり捉えていきたいと思っています。

 ─ 海外売上高比率は8割を超えていますが、今後さらに世界にどうアピールしますか。

 廣田 ブランドですね。アシックスのブランドをしっかり認識していただく。日本の「匠の技」、我々が最もこだわっている品質の良さを中心にして、ビジネスを拡大したいと思います。

 世界で勝負して感じるのは、日本の品質に対する信頼です。そして「ジャパンクール」で、日本の製品はかっこいいと思われている。その信頼を裏切らないようにしたいですね。海外のライバルは強力ですが、追いつけるようにしたいと思います。

 ─ 高岡さんは「眠りの世界に品質を」という標語を掲げて寝具の世界に新風を吹き込みましたね。

 高岡 私が40代半ばで始めた事業ですが、寝具がレッドオーシャンのビジネスだったところに、我々は「睡眠の質」という概念を提示してブルーオーシャンに変え、日本では順調に成長してきました。

 そして、我々はオリンピックをサポートしていますが、選手は最も睡眠にこだわる人達です。08年の北京五輪から選手達への供給を始め、14年のソチ五輪からオフィシャルスポンサーになりました。4年に1回の、人生で最も大事な時の寝具として選んで欲しい、そこで睡眠の質を高め、翌日のパフォーマンスを上げて欲しいという思いです。

 東京五輪では選手村全室に寝具を供給し、世界の寝具メーカーと競合した中で次のパリ五輪でも選手村の全ベッド、約1万6000床を供給します。

 ─ パリ五輪ではどういう寝具を供給しようと?

 高岡 SDGs(持続可能な開発目標)が強く言われる五輪になるでしょうから、「寝具のSDGs」を実現するための準備をしています。同時にこれは我々にとって海外市場への再チャレンジの機会でもあります。

 多くの方に「上場した方が楽なのでは?」、「海外に行かずとも日本で十分収益を上げられるのでは?」と言われます。自分でもなぜ挑戦するのだろうと思いますが、中学、高校のミッションドリブンな教育が影響しているのではないかとも感じることがあります。

 ─ 柴原さんは研究者から経営者の道に転じて、「医心館」という終末期の患者さんのケアをする「ホスピス」という業態を介護業界で確立して上場しています。今後の事業の展開は?

 柴原 日本は少子高齢化社会を迎え、病院で最期まで診るという時代から、自宅もしくは施設で看ましょうという時代へと変わりました。

 その中で末期がんなどで余命宣告されている方や、人工呼吸器を装着された方々が、退院を余儀なくされるも安心して療養する場がないという社会問題があります。その問題を解決しようというのが我々の事業です。

 私は大学を卒業してから約20年、基礎研究に携わっており、臨床医としての経験は1年ほどしかありません。今の事業は研究者の時に思いついたシンプルなアイデアを形にしたものです。

 ─ どんなアイデアですか。

 柴原 医師の世界では、寝当直という隠語があります。これは、私のような臨床経験の少ない医師でも必要とされる医師不足に悩む過疎地の病院で、単に当直室で寝ているだけの当直を指します。ある寝当直をしていた夜に、私などが当直代をいただくなど申し訳ないなと、また、そもそもどの病院にも例外なく医師が常駐している必要性ってあるのかなと気づいたんです。

 そこで医師の機能は外部の開業医にアウトソーシングし、残された病床の看護体制をより強化した在宅施設をつくれば、僻地における一部の病床機能の代替が可能となり、医師不足に端を発する医療課題を解決できるのではないかと思いついたんです。

 ゼロベースで、物事の隙間や矛盾を作業仮説として見つけ出し、その仮説を実証する過程を事業として捉えるのは、まさに研究者の発想だったと思います。

 ─ この事業は今広がっているんですね。

 柴原 2つのミッションのもと、日本全国で展開していきます。ホスピスを展開し、主には末期がん患者の療養の場をつくっていくというのが1つです。

 もう1つは、僻地で構造的な経営難に喘ぐ病院の経営を、「ホスピススキーム」によって改善していくことです。僻地の医療はこれまで医療従事者の献身によって支えられてきました。でも私たちは、僻地の医療課題をビジネスの力で解決できることを、実際に赤字の医療機関を収益化して見せることで、実証したいと考えています。

 ─ 日本の金融は転換期にありますが、加藤さんが頭取として取り組みたいことは?

 加藤 私の仕事は廣田さんが世界のライバルに追いつく、高岡さんが海外で挑戦する、柴原さんが全国に展開する、その取り組みをサポートすることです。

 廣田さんがおっしゃっていたように、日本には今、チャンスが来ていると思います。海外を回っても、投資家は非常に日本を見ています。日本は資源のない国ですから、外に出ていくことが必要です。その時に、我々はそのためのファイナンススキームだけではなく、情報提供などで差別化を図っていきたい。

 ファイナンスという本業で、皆さんをお支えするのと同時に、「貯蓄から資産形成」の流れを後押しするのも重要な使命です。この資産形成は銀行だけではできませんから、みずほの銀行、証券、信託という機能をいかして、安心をご提供するというのも大きな柱になります。

 ─ 頭取就任から2年目ですが、手応えを感じていると。

 加藤 我々は2年前にシステム障害を起こしましたが、みずほが安心してお使いいただける便利な会社だということを、お客様にご理解いただくことや社員にも伝えていくことが私の使命です。徐々にですが、手応えを感じています。

 ─ 海外からの日本への期待をどう受け止めていますか。

 加藤 日本には優れた技術と経営があります。これを例えばアジアの社会課題解決に結びつけていく。日本の技術に対しては、アジアからの関心が強く、ぜひ一緒に取り組んで欲しいというお話は来ていますから、それに必要なファイナンスを手掛けていきたいと思っています。

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