2023-09-12

【ニーリー】レッドオーシャンをブルーオーシャンにする佐藤養太の〝月極駐車場〟改革論

駐車場オンライン契約サービス「Park Direct」の掲載台数はトップだ



データビジネスとEV化にも手を打ち始める

 そもそも月極駐車場をどう見つけてきたのか。パークダイレクトを始めた2019年当初は、ニーリーの社員が不動産管理会社を訪問し、1件ずつ契約を取り付ける泥臭い作業が続いた。次第に導入数が増えていくと、口コミで評判が広がった。

「不動産管理会社からすれば、しっかり稼働させなければオーナーから信頼を失いかねない。決して疎かにはできない部分だったが、賃貸物件に比べると売り上げも低く、効率も悪い。それがパークダイレクトの導入で稼働率が上がったことにより今では自然と問い合わせがくる」

 パークダイレクト上の借主による決済金額も22年は前年比470%を記録。SBIインベストメントや三菱UFJキャピタルなどから資金調達を実施し、様々な企業からも声がかかる。その代表格がトヨタ自動車だ。

 法人車両をリースするトヨタからすれば、法人車両を必要とする顧客に車両の調達のみならず、駐車場の手配・管理までをセットにしてワンストップで提供することができるからだ。トヨタにとっては駐車場もセットで提供できるため付加価値がつく。「トヨタさんから声がかかった」(同)ほどだ。

 そして佐藤氏が今後見据えるのが駐車場に関するデータを活用したビジネスだ。「駐車場を入口とした自動車の情報を活用することで、例えば自動車に関連する広告を自動車の保有者に届けることができる」(同)。

 既に全国でフィットネスクラブを運営する業界大手の「コナミスポーツクラブ」とタイアップ企画を実施。パークダイレクトの利用者・導入済み不動産会社の従業員限定で、同施設を無料で体験することができる。コナミからすれば新規顧客の獲得が期待されるわけだ。


佐藤養太・ニーリー代表取締役

 もう1つが電気自動車(EV)だ。EVは充電に時間がかかることが弱点として挙げられる。また、充電場所も少ない。「駐車場のEV用充電スタンドの設置やサブスクリプションで利用できる仕組みなどを整えていきたい」と佐藤氏。新明和工業が管理する千葉県千葉市の駐車場にEV充電器を設置し、利用状況などを検証する実験を実施中だ。

 そんな佐藤氏は大学卒業後、金融機関向けシステム開発会社のシンプレクス・テクノロジー(当時、現シンプレクス)、GMOクラウド(同、現GMOグローバルサイン・ホールディングス)などを経て13年にニーリーを設立。「大手企業の新規事業創出やDX戦略などの開発を手掛けてきた」(同)。その過程で月極駐車場にまつわる課題を見つけた。

 選択肢の数と幅を増やしていくことを「社会の解像度を上げる」と語る佐藤氏は駐車場を「金の卵」と表現する。その卵をふ化させることができるかどうか。ニーリーの腕が試される。

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