2023-09-01

赤堀パッキング・赤堀仁社長の決意「伝統のゴム加工業界でアジアナンバーワンを目指す」

赤堀仁・赤堀パッキング社長

当社は1971年創業の工業用ゴム、スポンジの加工・販売を手掛ける企業です。私の父が立ち上げた会社で、私は2009年に2代目社長に就任しました。

 製造業、特に中小企業は景気の波を受けやすい傾向があります。バブル崩壊時、父が大変そうだなというのは聞かずともわかりましたが、当時大阪の企業に修業に行っていた私を呼び戻そうとはしませんでした。心配をかけたくなかったのだと思いますが、結局父は体を壊してしまうことになります。

 それでも、我々の業界が強いなと思うのは、苦しいながらも経営危機までには至らずに、事業を続けられたことです。

 08年のリーマンショックでは売上高が約3割落ちました。09年6月に私は社長に就任したわけですが、社員のボーナスを支給しないという苦渋の決断をしたのです。

 今だったら、何とかしてボーナスを支払おうとしたと思いますが、当時、経営の内情を見た時には正直に「出せない」と思い、実行しました。

 当然、社員は苦しかったと思いますが、1人ひとりが頑張らなければ給与もボーナスも出ないのだということを実感して欲しいという思いや、奮起して欲しいという考えもありました。

 それ以前は、会社の経営状態を知っていたのは社長である父だけでしたが、それでは自分事として考えられないだろうということで、以降は社員には私の口から会社の置かれている状況や業績について説明していくことにしたのです。

 今はボーナスを支給する際にも、きちんと説明しています。会社の業績、その中における社員1人ひとりの評価などは、言わなければわかりませんし、そうしなければ勘違いも起きてしまうからです。個人個人の次の期に向けた課題も、そこで明確になります。

 実は、先程のリーマンショックの際、確かに上期は売上高が約3割落ちたものの、下期で取り返しており、年2回のボーナスのうち1回は出せています。

 ゴム加工業界は、これまでの歴史の中で淘汰が進み、仕事が受けられる企業が限られてきています。その意味では、従来通りのやり方でも事業が継続できる環境ではありますが、そのままでは成長は望めません。

 そんな業界にあって、私は「ナンバーワンを獲る」と、あえて社内外に宣言して攻めに打って出ました。

 例えば、この業界はプレーヤーが限られていますから、「殿様商売」になっているところもあり、他社では今でも加工した製品をお客様が受け取りに行かれるケースもあると聞きます。

 それに対して、当社は当然ながら納品しますし、「超スピード」を謳い文句にしており「他社で間に合わない製品は我々に発注して下さい」と言っているんです。その上で「高品質」を実現する技術力にも自信があります。

 ただ、単なる規模の拡大は志向していません。国内では今の社員50人弱程度の規模を維持しながら、さらなる機械化を進めてアジアに打って出て「アジアナンバーワン」を目指します。今はベトナムにおける拠点づくりを進めている最中です。

 現在、同業で他に海外進出している企業はありませんから、実現すれば業界初になります。短納期の製品は日本で、通常通り出荷できる製品はベトナムで、という形で役割分担する体制を目指していきます。

 最後に、日本を支える製造業を、もっと明るく誇れる業種にしていきたいと思います。

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