2023-09-05

【米国進出50年】キッコーマン・茂木友三郎名誉会長に直撃「米国でもしょうゆは伸びるという確信があった」

今年6月、米国における生産拠点がグランドオープニングから50周年を迎え、記念イベントで挨拶をした茂木氏

「日本経済の最大の問題は新陳代謝」─。キッコーマン名誉会長で「令和国民会議(令和臨調)」を発足させた茂木友三郎氏はこう強調する。低迷する日本経済を再生させるためには、新しい企業を生み出し、役割を終えた企業は市場から退出してもらう仕組みづくりが重要と訴える。そして「若い世代はもっとリスクを取って挑戦すべきだ」と訴える茂木氏。50年前に挑んだ米国工場建設の舞台裏とは?

「人材は資源ではなく資本」アクシスコンサルティング社長・山尾幸弘


米中対立下の日本の立ち位置

 ─ 茂木さんは取り残されてきた課題を今こそ解決しなければならないという危機感から「令和国民会議(令和臨調)」を発足させたわけですが、国際社会の課題の1つに米中対立があります。どう分析しますか。

 茂木 米国が自由主義かつ民主主義であるのに対し、中国は独裁主義かつ専制主義です。両国で体制が違いますから、なかなか解決するには時間がかかるのではないでしょうか。

 ─ その中で、日本の立ち位置はどうあるべきですか。

 茂木 日本が非常に難しい立ち位置にあることは間違いありません。中国とは地理的に近いということが挙げられますからね。ですから、経済的な関係も非常に深くなると。

 既に日本と中国との経済的な結びつきは深くなっているわけです。一方で中国は米国とも深い。米国もこれまでずっと中国と貿易を続けてきたわけですからね。

 それを今はデカップリングということで互いに分断しているわけですが、なかなか完全にデカップリングできるわけではないと思います。最近ではリスク低減を図りつつ、関係を維持していく「デリスキング」という言葉も出てきています。

 ─ 経済的な結びつきは共に深くなり、最大の貿易相手国になっているわけですからね。

 茂木 ええ。中国とは政治体制が違うので、なかなか相容れないところがあるのですが、経済的には相当結びついているので、そういったことを踏まえた関係をどうやって構築していくか。これは米国も大変です。

 そして日本は地理的に中国と近いから、もっと大変になる。私もこの問いに対する明確な答えはなかなか出せないのですが、仮に中国と米国が武力衝突するようなことになってくると、事態は全く変わってきます。そういう心配はあります。

 ですから、今は中国からだんだん離れようとしている企業もあれば、中国での事業だけを独立させて西側との商売とは切り離している企業もあります。経営者も判断が難しいと思います。

 ─ 国家間だと様々な対立が出てくるものですが、その中で両国をつなぐことが企業人だとの声もあります。

 茂木 今までも経済的に結びついてきましたからね。ですから、中国との関係が悪くなったら困る人もいるわけです。そういう中では、経済人が間を取り持つということはあり得ます。両国間の関係が深刻化したら経済も何もなくなってしまいかねませんから、それを危惧している人は結構います。

 ─ キッコーマンの事業においてはどうなのですか。

 茂木 当社の場合は、中国の事業の割合は小さいんです。なぜかというと、まだ私どもの製品はアジアでは競合に比べ少し高いのです。ですから、なかなか市場に入りにくい。

 その結果として、私どもの事業は米国や欧州などが主軸になっているのです。アジアは次の市場として伸びが期待されるエリアと考えています。

 ─ アジアの人々の所得が上がってくれば買い手になる?

 茂木 これからの経済成長次第ですね。これは状況に応じて考えていかなければなりません。今の段階では割合、影響は少なく、市場としてもまだ大きくありません。

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