2023-06-21

【政界】岸田首相による首脳会談への表明に即応してきた北朝鮮の真意

イラスト・山田紳



慎重に大胆に

 ある政府関係者は「具体的な動きがあるわけではなく、協議再開の見通しもない」と語る。「首相直轄」の新たらしい組織をつくる動きもみられない。北朝鮮も「拉致問題は解決済み」「譲歩すべきは日本」という姿勢に変化はない。すぐに直接協議に応じるかは不透明で、拉致問題が進展するかは見通せない。

 しかし、これほどまでに日朝双方の発言がかみ合うことは珍しい。北朝鮮は現在、食糧難に見舞われているとされ、「小泉訪朝」の頃に似ているとさえ言われる。ある外交筋は「首相がゼロベースで発信することはない。明らかな意図のあるメッセージだったはずだ」と指摘する。日朝協議が再開する可能性を完全に否定することはできない。

 核・ミサイル開発をやめず、東アジア情勢の緊張感を高める北朝鮮を揺さぶるには「日韓、日米韓の結束を維持し、圧力をかけ続けることが必要になる」(与党関係者)とされる。その一方で、拉致問題は日朝2国間の懸案なので、日本が主体的に動く必要がある。

 北朝鮮とどう対峙するのか難しい判断が強いられそうだ。日米韓の連携が強固になってきたのに、日本だけが北朝鮮との直接対話を進め、米韓両国に抜け駆けと映れば、北朝鮮の思うつぼだ。米韓両国と情報を共有しながら、北朝鮮の真意と出方を慎重に見極める必要がある。

 岸田は、ロシアによるウクライナ侵略に対し、欧米諸国と足並みを揃えて厳しい姿勢をとった。暴力による主権侵害という意味ではウクライナ侵略も拉致問題も同じだ。拉致という理不尽な行動に対する毅然とした態度に加え、問題解決に向けた強い決意と覚悟、そして大胆さが必要となる。(敬称略)

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