2023-03-17

ミライロ・垣内俊哉社長「コロナ禍でも意志ある経営者は障害者への取り組みをやめなかった」

垣内俊哉・ミライロ社長



災害時などで活躍する「モバイルトイレ」

 ─ この課題解決に向けた取り組みを進めている?

 垣内 避難所となる体育館にバリアフリートイレを増やせるかというと、それは簡単ではありません。そこで、災害時にバリアフリートイレを持っていけるようにすればいいだろうということで、トヨタ自動車さんが開発した、移動型バリアフリートイレトレイラー「モバイルトイレ」の普及に取り組んでいます。

 現在実証を重ねていますが、このトイレのメリットは移動が可能なので、複数の自治体が共同で利用できることです。資金を投じてバリアフリートイレを増やすことなく、災害時にもフレキシブルに対応できます。

 災害時だけでなく、障害者が働くオフィスや工場で、バリアフリートイレが設置できないところに置いたり、コンサートなどのイベント会場に設置したりすることも考えられます。今はこの「モバイルトイレ」を多くの自治体、企業に認知していただくことが大事だと考えて活動しています。

 障害者に関する課題は山積していますが、一つひとつ取り組むことが重要ですし、今後も我々だけではできないことをトヨタさん、アマノさんといった企業と連携して取り組むことができたらいいなと思います。

 ─ このトイレは海外展開もできそうですね。

 垣内 確かに、日本だけでなく海外にもポテンシャルがあると思います。今後、海外にも輸出できれば、日本が生み出したソリューションということで、世界から評価され、広がっていくことも考えられます。

 ─ ある意味で、我々が普段気づかない部分に光を当てる取り組みだと。

 垣内 そうですね。例えば、東日本大震災の時には、車椅子の不足が顕著でした。なぜなら、乗っていた人の車椅子が流される、もしくは潮風によって錆びるという事態がありました。また、高齢者、障害者の避難に向けて自衛隊の方々も車椅子を相当数必要としていたからです。

 私達は支援金を募って、被災地に車椅子を贈るという活動を進めました、加えて、この取り組みは海外向けの報道でも取り上げられて、世界各国からも支援が集まり、被災地に車椅子を贈ることができたんです。

 その後は、各被災地でこの取り組みが継承され、被災地には車椅子が必要だという認知が広がりました。そういった形で一つの文化を形成できたように、先程お話したトイレについても、新しいソリューションとして認知されることで、普及が進むと考えています。

 ─ 災害などの惨事は厳しい経験ではありますが、人間性を見つめ直すきっかけにもなりますね。

 垣内 ええ。阪神淡路大震災の時には、避難所はもちろんのこと、仮設住宅のバリアフリー化も十分ではなく、障害のある避難者は苦労したとの声が多くありました。その後の東日本大震災では、その経験から仮設住宅のバリアフリー化は一定程度進みましたが、トイレの課題は解決できていなった。

 私は11年5月に東日本大震災の被災地に入り、それぞれの場所を見て周りましたが、トイレの課題を実感し、何とか解決したいという思いを持ち続けてきたことが、今回の取り組みにつながっています。

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