2022-12-20

【貯蓄から投資へ】大和証券グループ本社・中田誠司社長 「米国は40年かけて投資環境を築いてきた。日本も『30年計画』で取り組みを」

中田誠司・大和証券グループ本社社長

「日本の個人金融資産に占める株式の比率は10%程度ですが、1980年の米国も14%程度でした」─中田氏はこう話す。今、岸田政権は「資産所得倍増プラン」を打ち出している。長年にわたり、「貯蓄から投資へ」は実現していないが、中田氏は「米国も40年かけて取り組んできた」と一朝一夕にはいかないと指摘。世界経済が混沌とする中、投資に向けて資金を動かすことができるか。

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2023年の世界、日本の成長はどうなる?


 ─ コロナ禍、ウクライナ戦争、そして米国の金融政策の変更などもあり、世界経済の先行きは混沌としています。現状をどう見ていますか。

 中田 2022年9月26日にOECD(経済協力開発機構)が世界経済の見通しを発表しましたが、23年の世界の経済成長率を2.8%から2.2%に引き下げました。

 また、10月11日にはIMF(国際通貨基金)が見通しを出しましたが、23年の世界の経済成長率を2.9%から2.7%に引き下げました。どちらも下方修正ではあったものの、まだ2%台半ばくらいの成長はするという見通しです。

 特に、10月のIMFの見通しが象徴的でしたが、世界経済全体は2.7%の成長で、主要先進国、いわゆる「G7」を見ると、実は日本がプラス1.6%の成長と、主要先進国の中で最も高い水準になっています。

 ─ 米国の成長率見通しよりも高かったわけですね。

 中田 はい。こうした数字は、久しく見たことがありません。各国が低成長の中といえども、相対的に日本の成長率が高いと見られています。

 かつ、日本では、まさにこれからコロナの水際対策緩和によるインバウンド(訪日外国人観光客)需要、個人の消費需要などの効果が出てきます。それらの要素を考えると、さらに上方修正される可能性もあります。

 また、よく言われていた半導体不足の問題も、マイコン(MCU、自動車やスマートフォンの制御に使われる)などは引き続き不足感がありますが、様々な自動車部品を見ていると、減産効果もあって、在庫が積み上がってきており、おそらく23年には半導体不足も解消に向かっていくだろうと。

 そうなると、抑え込まれていたペントアップ需要(繰越需要)が出てきて、自動車業界を中心に状況がよくなってくるのではないでしょうか。

 ─ 日本の経済状況は好転に向かう可能性があると。

 中田 そうですね。そう考えると、私は23年になると、日本も含めて、経済成長率は上方修正含みになってくるのではないかと見ています。

 今の状況は、確かに混沌としていますが、様々な指標を見て、ここから1年、2年先を見通すと、今が底なのではないかという感じがしますね。

 ─ 意外と底堅い部分があるということですね。その状況下で23年4月には日本銀行総裁が交代します。金融政策、金利動向はどうなると見ますか。

 中田 ナーバスな問題だと思います。ただ、「異次元の金融緩和」と称されていますが、「異次元」という言葉を使っている以上、恒常的に続かないということですよね。世界の金融当局がそうであったように、いずれは日本も異次元の状態から正常化に向かわざるを得ないと思います。

 いつ、どのタイミングで金融政策の変更が行われるかは、まだ定かではありません。しかし、今は端境期であり、必ずそういうタイミングが来ます。その際には副反応が当然出ると思いますが、その副反応をいかにミニマイズさせるかがポイントだと思います。

 そのためには、市場の仲介機能を果たしている、我々証券会社などの金融機関、マーケット、金融当局、財務省を含めて連携を密にしていかなければなりません。

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