2022-12-20

【貯蓄から投資へ】大和証券グループ本社・中田誠司社長 「米国は40年かけて投資環境を築いてきた。日本も『30年計画』で取り組みを」

中田誠司・大和証券グループ本社社長



「貯蓄から投資へ」が進んでこなかった現実も

 ─ 今、岸田政権は「新しい資本主義」を打ち出しています。

 中田 アベノミクス以降、企業は大きく収益を上げられるようになりました。しかし、それらの収益が社員に還元されることは少なく、多くは内部留保に溜まっています。

 本来は企業の成長と共に家計も同じく成長するべきですが、これまで家計には中々分配が回らず、また、ゼロ金利下で厳しい状況が続いていました。

 企業の成長と共に家計が成長すること、いわゆる資産所得を好循環させていくことが新しい資本主義だと考えています。

 ─ 日本では長年「貯蓄から投資へ」が言われながら、進んでいないという現実があります。

 中田 例えば、米国は個人金融資産のうち、株式等が39.8%、投資信託が12.6%(いずれも22年3月末時点)となっており、個人の金融資産は20年間で約3倍に増加していますが、いきなり今のような状況になったわけではありません。

 米国民の方が日本国民よりもリスク選好がある国民性なのかといったら、決してそうではありません。米国では1974年に、個人の税制優遇制度の個人退職勘定ができ、81年には確定拠出年金ができました。そこから40年以上かけて、今のような状態をつくってきた。

 ─ 国民のお金を投資に向かわせるのは一朝一夕にはいかないと。

 中田 そうです。例えば今、日本の個人金融資産に占める株式の比率は10%程度ですが、80年の米国も14%程度でした。

 このように、「貯蓄から投資へ」というのは、一朝一夕にできるものではなく、国民皆が長く使える税制優遇制度をしっかりつくった上で広く行き渡らせないといけません。つまり、20年、30年と時間をかけて取り組むべきものだということです。

 日本では2001年に個人型・企業型の確定拠出年金ができました。ただ、01年は不良債権処理真っ只中で、制度を活用する機運がそれほど高まらなかったわけです。17年にようやく「iDeCo」という名称にしてプロモーションを始めました。

 そして、今の時限措置である「NISA」(少額投資非課税制度)ができたのが14年、「ジュニアNISA」が16年、「つみたてNISA」が18年ですから、日本ではそうした税制優遇制度ができ始めて、国民に知れ渡ってから数年しか経っていないのです。

 ─ NISAについては、岸田首相も「恒久化」について言及しましたね。一方で、高額所得者を対象にした「金融所得課税」の議論もあります。

 中田 税制は、常に変わっていく、改善していくものですが、課税を実行するには段階や、タイミングがあると思います。

 今は、「新しい資本主義」の下に「貯蓄から投資へ」という流れを後押しする機運が高まっている時です。「金融所得課税」などの富裕層向けの課税を、未来永劫否定するものではありませんが、どのタイミングで、どのように実施するかというのは、よく考えて実行していただきたいと思います。

 ─ NISAの恒久化は日本の若い世代が、投資に向かうチャンスでもありますね。

 中田 もしNISAが恒久化されれば、若い世代の方には、それを上手に使って、今後30年、40年のプランで資産形成をしていただきたいと思います。ご高齢の方にはNISAの活用に加え、今の低金利で利息を生んでいない預貯金などの資産を、少しでも運用でプラスアルファの利回りを追求するような商品を用意していく。その両面が必要だと思っています。

 ─ その商品である「ファンドラップ」を販売していく上で、手応えは感じていますか。

 中田 世界の経済、政治が目まぐるしく変わっていく中で、投資について自分で判断して、様々なやり取りをするのは、私でもできません。

 ファンドラップは、それをプロに任せて国際分散投資をしてくれるという点が非常に魅力です。特に、現在のような急激な円安の局面では、国際分散投資がより重要になってきます。

 最近では「金融リテラシー」の重要性が改めて叫ばれ、学校教育に盛り込まれてきています。今の若い方達の金融リテラシーを高めることは当然大切だと思いますし、我々証券会社の重要な使命であると考えています。一方、ご高齢層のリテラシーを短期間で一気に引き上げることはなかなか難しいかもしれません。

 日本は、デフレ下に加え、超高齢化社会であるがゆえに、コアの金融資産は預貯金です。そうしたご高齢の方々の預貯金の受け皿として、ファンドラップのように、プロが一任勘定で、国際分散投資で運用する商品の必要性はますます高まるだろうと感じています。

 ─ 顧客のニーズは高いということですね。

 中田 高いですね。弊社のファンドラップの運用スタイルは700通り以上と、業界トップクラスですので、お客様の様々なニーズにお応えして設計することができます。また、お手軽なロボアドのファンドラップ・オンライン、暦年贈与や相続時に受取人を指定できるサービス、富裕層向けのファンドラップ等、様々なラインナップを揃えております。

 その他にも、非常にシンプルでカスタマイズされた「ゆうちょファンドラップ」をゆうちょ銀行様と共同で開発し、22年5月より、ゆうちょ銀行様のお客様に販売して頂いています。

「ファンドラップ」と一言でくくるのではなく、ラップにも様々な商品があり、それに見合ったお客様にきちんとアクセスする。これが重要だと思います。

 ─ 販売する立場としては、コンサルティング機能が要求されますね。

 中田 そうです。コンサルティングによって、お客様のニーズを引き出すことができると、そのニーズがいかに多様化しているかがわかります。お客様のニーズの多様化に応じた商品をきちんと揃えるのが我々の重要な役割です。

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