2022-11-22

みずほ信託・梅田圭の「課題解決型ソリューション戦略」 個人、企業の資産をいかに有効活用するか?

梅田圭・みずほ信託銀行社長



「所得資産倍増」、「資産承継」で果たす役割


 今、岸田文雄政権は「資産所得倍増」を打ち出している。まだ後押しする政策は力不足だが、政治的メッセージが発せられた意味は大きいと見られている。

 信託銀行は従来ビジネスとして、投資信託の受託を手掛けており、これに注力するというのは大前提。

 それに加えて今、新たな潮流も捉えようとしている。それがSTO(Security Token Offering=ブロックチェーン上で発行されるトークン化された証券)の不動産投資への活用。

 みずほ信託は22年4月に信託銀行として初めて、野村ホールディングス、SBIホールディングスが出資する「BOOSTRY」のSTO発行システムに参加することを決めた。22年中に第1号案件に取り組む方針。デジタル活用だけに、個人への広がりも期待される。

 また、20年1月に始めた地方銀行向けの私募の不動産投資ファンドは第4号案件まで手掛ける段階に来ているが「規模は大きくなり、評判も上がっている」と手応えを感じている。

 不動産投資にはREIT(不動産投資信託)もあるが、能動的に物件を見定めるというよりは、運用のポートフォリオに置いておく商品といった性質が強い。株式市場の変動の影響も受けやすい。

 一方、私募ファンドの場合には市場流通価格はなく、あくまでも不動産の価値、不動産鑑定価格をベースに、「ネットアセットバリュー」(純資産価値)で投資価格が決まる。市場の変動に引きずられにくく、ボラティリティが低いという性質がある。運用に苦戦する地銀にとってはありがたい商品となっている。

 さらには富裕層向けにも不動産ファンドを提供。ただ、個人が不動産の〝目利き〟をするのは難しいため、そこはみずほ信託が物件管理も含めて支援。これは1号案件を終えて、2号案件を立ち上げようという段階。

「2000兆円を超える個人金融資産を、どう投資に振り向けるかは日本全体の課題。不動産投資の他、今後は再生可能エネルギーなどインフラ関係への投資も手掛けていきたい」

 企業、個人ともに今は投資先を探している状況。金利上昇のリスクはあるが、不動産への注目度は引き続き高い。

 相続は信託銀行のメインビジネスだが、特にコロナ禍以降、人々の「資産承継」への意識が高まっている。

 みずほFGの中では、みずほ銀行、みずほ証券との連携も活用しているが、特にみずほ信託はシニア世代の相続や贈与ニーズを捉えている。

 中でも相続・贈与などの信託機能に「見守り」や「生活サポート」を加えた「選べる安心信託」という商品は、21年度に1140件、442億円を販売、22年度上期は625件、255億円と、前年度を上回るペースで販売が進んでいる。

 また、こうした自社で組成した商品だけでなく、顧客からの要望に応える「オーダーメイド型」の商品にも力を入れる。

 みずほ信託の顧客には企業オーナーも多いが、近年はITベンチャーを上場させて財産を築いたような経営者も増えている。

 そうした経営者は40代、50代の働き盛りで、これまでは相続を考える余裕もないというのが以前だったが、コロナ禍を経て、子供がまだ小さいこともあり、「自分に何かあったら」ということを考え始めた。

 財産は当然、自分の妻子に遺すわけだが、会社の経営権・議決権を子供などに遺すことは難しい。そこで、会社の共同経営者や経営陣に移す形にし、第2受益者的な形で自分の子供を置くといった事例があった。これはまさにオーダーメイドで「我々が知恵を使い、信託機能の柔軟性を発揮できる頑張りどころ」として力を入れている。

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