2022-08-25

【政界】「経験と実力」の布陣を強調するが…局面打開へ岸田首相の〝電撃〟内閣改造

イラスト・山田紳



旧統一教会との関係で逆風

 特に今回は、参院選に出馬せず引退した国家公安委員長の二之湯智が民間人閣僚だった。もちろん閣僚の半数は国会議員から選任しなければいけないが、民間人の閣僚は違憲でも違法でもない。ただ、国家公安委員長は警察庁を所管する国家公安委員会のトップであり、要人警護のあり方が問題視されている元首相銃撃事件の責任論がくすぶっていた。

 また、8月下旬には衆院で安倍の国葬に関する閉会中審査を実施することで与野党が合意しており、「引退した人ではなく、現職国会議員の公安委員長であるべきだろう」(与党関係者)といった意見が根強くあった。

 しかも、多くの海外の要人が参列する国葬の警備計画をスムーズにつくるため、早く交替させるべきだという声もあった。既に国葬の準備会議も始動していたことも、早期改造の判断に傾いたようだ。

「国民から信頼される政治、行政を行っていく観点から、岸田政権においては、当該団体との関係について自ら点検し、厳正に見直していただくことが、新閣僚、新党役員にも前提となる。こうしたことは徹底をしていきたい」

 岸田は内閣改造・自民党役員人事を前に、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)や関連団体と関係のある国会議員の起用に関して、そう強調していた。

 安倍の銃撃事件をきっかけにクローズアップされた旧統一教会。〝霊感商法〟や強要的な多額献金など、その活動を巡って社会問題になったことがあるだけに、政治家との関係に関心が集まった。

 国民世論は政治家との関係の実態解明を求める声が強く、選挙支援を受けたり、パーティー券を購入してもらったりした国会議員が相次いで明るみに出ていた。沈静化する気配はなく、これ以上長引けば、さらなる内閣支持率の低下は避けられないとの焦りは募っていたようだ。

 岸田は「見直し徹底」を口にした通り、今回の内閣改造で旧統一教会や関係団体と何らかの接点、関係があったことを認めた二之湯や防衛相の岸信夫、文部科学相の末松信介ら閣僚7人を全員交代させている。

 一方、岸田は突破すべき課題として挙げた物価高騰対策やコロナ対策、防衛力の抜本的強化などについても、早急に手を打たないといけないとの危機感が強かった。

 内閣改造では、物価高対策を担う経済産業相に経験者の西村康稔を再び起用し、経済再生担当相の山際大志郎を続投させた。また、コロナ対策の要である厚生労働相に3度目となる加藤勝信を登用した。防衛相も2度目の浜田靖一を充てた。徹底して「経験と実績」を重視した
態勢を整えたといえる。

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