安倍政権を参考に…
とはいえ、早期改造に踏み切らざるを得ない事情もあった。旧統一教会と自民党議員の関係が相次いで明らかになっていたことと、9月
27日に行うことを決めた安倍の「国葬」への反対論が根強いことだった。
内閣支持率が急落したことも焦りを増幅させた。NHKの8月の世論調査は7月調査より13ポイント下落し、46%だった。共同通信の世論調査も12・2ポイント減の51・0%。いずれも昨年10月の岸田内閣発足後で最低を記録した。
他の報道機関の世論調査でも下落傾向にあった。速やかに人事刷新を図り、さらなる世論の逆風に備える必要があるとの判断が強まったことは想像に難くない。
そうした中で岸田が参考にしたのが、2016年の第3次安倍第2次改造内閣のときの日程だった。
16年は参院選が今年と同じ7月10日に投開票された。参院選を受けた臨時国会は8月1日に召集され、会期は3日までの3日間だった。当時の首相だった安倍は、その会期末の3日に内閣改造・党役員人事に踏み切っている。
岸田も今回、臨時国会(8月3~5日)の会期中での内閣改造を狙ったとされる。ただ、国会で5日に安倍の弔詞が決まったことや、米国のペロシ下院議長の来日も重なったことなどから、そのシナリオは見送ったという。
それでも岸田は、8月6日の広島市原爆死没者慰霊式・平和祈念式と9日の長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典への出席を優先させつつ、閉会後で最速となる日程をピンポイントで見定めた。そして直前の5日に一気に根回しに動いたという。
第3次安倍改造内閣が発足したのは15年10月7日で、岸田内閣発足が21年10月4日。いずれも1年を待たずしての内閣改造となるなど類似点は多い。
参院選の日程とその後の臨時国会の日程だけでなく、第3次安倍改造内閣は参院選で参院議員の閣僚2人が敗れ、議院議員の任期満了に伴い、民間人閣僚となったことも、今の岸田内閣で参院議員の閣僚2人が民間人閣僚となっていたことと重なる。まさに似通った政治環境にあったのだ。