2022-08-19

【政界】元首相の死で権力構造が変化 問われる岸田首相のリーダーシップ

イラスト・山田紳



途方に暮れる立憲

 国会対策に頭を悩ませる必要がなくなったことも岸田にとっては好都合だ。立憲民主党は参院選で改選23議席を下回る17議席にとどまった。引き続き参院の野党第1党とはいえ、勢力は自民党の3分の1に過ぎない。

 選挙中、小沢一郎が安倍の死を「自民党の長期政権が招いた事件」と評したのは立憲にとって誤算だった。小沢は地元の岩手だけでなく、北海道や新潟でも側近の候補者を当選させることができず、「神通力」は失われた。宮城、福島、三重という旧民主党政権の立役者が仕切った選挙区でも敗れ、立憲の退潮は著しい。それでも代表の泉健太の責任論は浮上せず、執行部は途方に暮れている。

 一方、日本維新の会は昨年の衆院選に続いて議席を伸ばした。比例代表は8議席で立憲を1議席上回った。代表として知名度のある松井一郎(大阪市長)は10月の任期満了までに辞任する意向を変えず、8月に代表選を実施する。選挙区では重視していた東京や京都で議席を
取れず、「全国政党化」は道半ばだ。新代表のもと、来年春の統一地方選で党の足腰を強化できるかが次期衆院選に向けた試金石になる。

 毎日新聞が参院選後に実施した全国世論調査では「立憲と維新のどちらに期待するか」という問いに、「維新」との回答が46%を占めた。「立憲」は20%で、「どちらにも期待しない」の28%よりも低かった。

 自民党内の力学は変わるが、これで岸田の視界が開けたわけではない。今後は正味の岸田政権が世論の評価にさらされる。日本の針路をどうするか。来年度予算編成や防衛3文書改定など政権内でも意見が分かれる課題にどう解決策を見いだすか。それらを一身に背負う岸田自身が道を切り拓いていくしかない。 (敬称略)

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